ナニかおかしい不審者から逃げる話。

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ぐさり、ぐさりと写真に刃物を突き刺していく。

歯ぎしりをするその顔は怒りに満ちていた。


この狂気じみた行為をとがめるものはいない。

ここが彼の館だからだ。ここはすべて彼の管理下にある。

地団駄を踏んで、キセルの煙が部屋を充満させている。


「A、A君をあんな奴には渡さない」


そして今、完璧な管理下だったはずの、一寸の狂いもなかったはずの

「あんな奴に！！」

演目に、邪魔者(アドリブ)が迷い込んできた。


その声は荒く、眉間にはしわが寄っていた。


今この瞬間、君がほかの奴の手の中にいるなんて、あっていいわけがない。

考えただけで虫唾が走る。


彼はゆっくりと手を止める。

こんなところで君を逃すような人じゃあない。自分でも分かってる。


「...さっさと君を汚物から救い出して見せよう」


先ほどとは違う冷淡な声。そして、"君"に見せる時のようなじっとりとした目。

そして、整った顔立ちから出される、不気味に少し上がった口角。


「待っててね。今、行くから」

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