蒼色マーブル３【桃】 (ページ7)

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「てかさ、俺中2ん時Aと山中絶対付き合うと思っててんけど。この前Aにそれはちゃう言われてびびった」

しばらく山中くんと話してたら、前に座ってるのんちゃんが思い出したようにそんなことを言う。

「は、むしろいい感じやったのお前と関野やろ！小瀧が水野と付き合い出した時のがよっぽどびびったわ。え、そっちなん？みたいな」

今日は来ていない、サヤカちゃんの名前を出す山中くん。

「ハハッ、言うたらそれもすでに否定されてるから」

「え、うそやん！」

驚いたように私の顔を見る山中くんに、曖昧に笑い返す。

「マジでー？でも今も学校同じやろ？ワンチャンあるやん」

なんてことない冗談に、のんちゃんも「あぁ、あるか…」なんてわざとらしく考え込む。

やっぱり、のんちゃんにとっては過去のこと。

嫌そうでも気まずそうでもなく、冗談で返すのがそれを物語ってる。

山中くんも、そんなのんちゃんにケラケラと笑う。

みんな、そんなもんなのかな。
中学時代の恋に縛られてるなんて、おかしいんかな。

目の前で笑うのんちゃんを見ると、心がまるごと持ってかれるみたいなのに。

どうやって、この気持ちをやめればいいの。

どうしたら、諦められるの。

どうしたら、振り向いてくれるの。

しばらくガヤガヤと盛り上がり、「またそのうち集まろう！」なんてまたしばらく間が空きそうな約束をして、みんなでお店を出る。

誰かが曲がり、分かれ道で分かれ、少しずつ人が減っていくうちに、気づけば私達のマンションに着く。

「じゃあ、バイバーイ。また遊ぼな」

「バイバイ、うん、遊ぼー」

エレベーターが5階に止まり、リナが降りて、のんちゃんと二人だけになる。

5、6、7…と順番に数字が光る。

8の数字がオレンジ色になったとき、少し後ろに立ってたのんちゃんの手が私の肩に触れた。

「ん？」

振り返ると、親指と人差し指でつまんだ糸くずを落としてるのんちゃん。

「あ、ありがと…」

「もう誰もおらんけどな」

あぁ、ズルイ。笑い方が優しい。

「フフッ、たしかに」

ガタン、と少し振動してエレベーターが止まり、「じゃあな」のんちゃんが寄りかかってた壁から体を起こす。

「のんちゃん」

半分、勢いでのんちゃんを引き止めた。