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体育館に入ると、ちょうど女の子達がたくさん踊っている。
曲が一瞬ピタッと止まって、出てきたのは神ちゃんともう一人の男の人。
突然始まった激しいダンスに体育館中が歓声に包まれる。
あちこちで上がる叫び声に混じって、シゲも「神ちゃーん!」なんて叫んでる。
神ちゃんが舞台袖にはけるとずっと見上げてて疲れたのか首をおさえてぐりんぐりんと回してるシゲ。
そのシゲが、斜め後ろの方を見たままピタッと動きを止めた。
どうしたの、って感じにシゲの方を向いて首を傾げると、何も言わずに後ろを指差す。
上半身を捻って指が示す先を見ると、今入ってきたらのんちゃんの姿があった。
誰かを探してるのか、キョロキョロしてる。
ひとりだ。
その事実に、ホッとしている自分に気づいて、慌ててステージの方に顔を戻した。
でも、意識を逸らそうとすればするほどに、ユキ先輩と何の話をしたんだろう、とか、よりは戻さなかったのかな、とかのんちゃんのことばかりぐるぐると回る。
下を向いて、誰にも気付かれないくらいのため息を吐いたところで、シゲがぱっと私とは反対側を向いて、その動きにつられるように私もそちらに目を向けた。
息が止まるかと思った。
のんちゃんを近くで見るのが、久しぶり。
「流星知らん?」
シゲを見てそう言うのんちゃん。
「さっき廊下で見たけど」
「いや、ここで」
「見てない」
今度は私の顔を見て、「見た?」なんて聞かれる。
そのトーンが普通すぎてびっくりして、一瞬思考が停止した後、慌てて首を横に振った。
小さく頷いたのんちゃんが首を伸ばして体育館を見渡すから、私とシゲもなんとなく周りを探してみるけどわからない。
「まあいいや、あとでで。さんきゅ」
結局、のんちゃんはダンス部の発表が終わるまでずっとそこに立っていて、シゲと話してる時に、その奥の私と一回だけ目が合った。
終わってから少しずつ人がいなくなって、前の方に藤井くんを見つけた。
じゃあ、と出ようとしたところで「そういえば照史くんおったで」なんてのんちゃんが言う。
「さっき会った」
「そうなん?」
「うん、ここ来るとき」
「そっか」
シゲが横を通ったクラスの男の子と話し出したときのんちゃんが右手で首を撫でながら
「月曜用事ある?」
なんて呟くように言った。
「え?」
「月曜。代休」
「ない、けど」
わかった、とそれだけ言ったのんちゃんが藤井くんの方に走っていった。
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作者名:花音 | 作成日時:2016年7月9日 14時