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人で溢れている廊下をシゲと並んで歩く。


「結構人来てるな」

「体育館もたくさんいるかな」

「やばいな、良い席なくなる」


ライブハウスみたいなシゲの言い方に笑っていると、「A!」という声が聞こえて顔を上げる。

「おー、照史くん!来てたんや」


そういえば照史くんもこの学校の卒業生だっけ。
学校で会うのは、なんか変な感じがする。


「久々ー、でもない?」

「フフッ、でもない。この前はどうも…」


いえいえ、なんてニカッと笑う。


「あれ、となり…彼氏?」

シゲの方をちらっと見て、意味ありげな顔で言う照史くんに、ううん、と小さく首を振る。


「オトモダチです、どうも」なんてきゅっと口角をあげてペコッと頭を下げるシゲ。


「あっ、そうなん?Aの兄ですー、どうも」

「違う」

「ええやん、ざっくりお兄ちゃんで」

「ざっくりしても違う」


高い声で笑う照史くんを横目に「同じマンションに住んでて」と言うと納得したように頷くシゲ。


「そういえばさっき望にも会ったで」

「あぁ、そうなんや」

「反応うっすー!可哀想やな、あいつ」

「フフ」

「あいつは彼女とおったで」

「…かのじょ?」

「俺一回家で見たことある子と一緒やったで?あれ彼女ちゃうの?」

「…んーと、わかんない」

「ハハ、そうなん?でもたしかに私服やったし他校なんかな」


彼女かどうかが『わからない』の意味だったけど。

付き合う付き合わないなんてやりとりは、数分あればできることで、さっきユキ先輩はきっとのんちゃんを探してたから、もしかしたら復縁したのかもしれない。

でも、照史くんにそんな事情まで伝わるはずもないし、そのことを話せば私の好きな人のことを知っている照史くんに諸々がバレる気がする。


「そういえば照史くん一人で来てるん?」

「いや、ちゃうで?高校の同級生と。俺さっきトイレ行っててん」

「ハハ、それ早く戻らないとあかんやん」

「ほんまやな、じゃあな!」


ははっ、と楽しそうな照史くんに手を振って、反対方向に進み出す。


「あ、やば、ダンス部始まってる」

腕時計を見てシゲが言って、「急げ!」と手首を掴まれて、走り出す。

モヤモヤとした何かを吹き飛ばすように、体育館に向かって走った。

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作者名:花音 | 作成日時:2016年7月9日 14時

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