蒼色マーブル３【桃】 (ページ11)

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『着いた』というメッセージが届いて、お母さんたちが起きないようにそーっと扉を開ける。

壁に寄りかかっていたのんちゃんがわたしを見て、携帯を持った手を少し上げた。

きっと、下で待ち合わせって言わなかったのは、遅い時間だからっていうのんちゃんの気遣い。

「おめでとう」

「ありがとう。あれやな、17歳の俺に初めて会ったで賞」

「フフッ、なにそれ」

ＶネックのTシャツとスウェットに、声も夜だからなのかいつもより少し低く聞こえて、やたらとどきどきする。

二人一緒にエレベーターで下まで降りて向かう、すぐそこのコンビニ。

夜だからとなんとなくパーカーを着てきたけど、さすが温暖化なのかむわっとしていて、いらなかったな、と感じる。

「あ、のんちゃん、あげる」

「ん？おっ、サンキュー」

今日買いに行ったチョコを渡すとのんちゃんはふわっと笑って、心臓をぎゅうぎゅう握られてるみたいになる。

「なあパピコ食べよ」

アイスコーナーを差して言うのんちゃん。

「この時間に？」

「ハハッ、太るな」

「うるさいな。まあええよ、食べよ」

レジに並んだのんちゃんの手から「私買うで」アイスをもらう。

「誕プレ？」

「うん」

「ハハッ、半分にしたら60円やん」

「えー、じゃあケーキとか食べる？」

「それこそこの時間に？やな」

「そやろ？なんかある？他に欲しいの」

「なんやろー…お金とか」

「生々し！」

「金欠やねん」

「私も余裕ではないわ」

「バイトしてるんやろ？」

「一回行っただけ、単発の」

「ほらー。俺サッカー少年やからさ」

「風貌的には少年感ゼロやけどな」

「実際一歳年もとったし」

「そうやん」

二人でマンションの敷地内の公園のベンチに座り、一つずつアイスを咥える。

虫の声だけが響く空の下で、二人同じものを食べているだけで、たまらなく嬉しくなった。

空を見上げると、明かりが減っているからか、夏の夜の空気のせいか、なんとなくいつもよりも星がよく見えるような気がする。

ボーッと上を見ていると、のんちゃんも同じように空を見上げていた。

「デネブ、アルタイル、ベガ？」

のんちゃんが夏の大三角形を一つずつ指差して言う。

「ベガ、アルタイル、デネブやない？」

「あれ、そうやっけ」

「天の川がこうやってあんねんで？」

「ああ、そっか。じゃあこれベガで、これがアルタイルか」

「うん」

二人でベンチに背中を預けて、空に手を伸ばして話す。