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鍋の火を緩めた花子はスルリと僕の腕から抜け出し浴室に向かう

振り向くことのない後ろ姿に、なんだかなぁ、と物悲しくなり誤魔化すように溜め息を吐いた


以前であれば僕が早く帰って来たら喜んで、うっすら笑顔を浮かべて頬を紅潮なんかさせてくれていたのに…

「あら帰ってきたの?」的な雰囲気が漂う現実がマジで辛い



そんなことを考えていると戻ってきた花子が今だにコンロの前に立っている僕に首を傾げるが、目隠しを外した顔でニコリと微笑み誤魔化した

花子は深く追求することはせず「用意してたらいい温度になってると思うよ」と続けたため、浴室に向かう

案の定シャワーを浴びている間に湯船は温まっていた


ホカホカになって風呂から出ると、同じ様にほかほかの食事がテーブルに用意されていた

メニューは先程聞いたもの

認識した途端に抑えられていた腹の虫が一斉に鳴き出す



「パンが焼けるまでもう少し待っててね」

「んー」


返事をしながら気に入って購入した大きなソファな腰掛ける
何となく手持ち無沙汰になり手近にあったリモコンでテレビを付けると何と言うタイミングか

丁度花子の誕生日に行った水族館の特集をしていた

売れない芸人が紹介しているのはお土産コーナー



チラリと花子を見るが、何度も水族館な名前が流れて気が付いてる筈なのにミジンコ程興味がないのか此方を見向きもしない




『 …見たくなったの。だって水族館…蒼くてキラキラしてて悟の瞳みたいに、綺麗だから 』





浮かんだのは水族館に行った後、僕がどうしてそこなのかと尋ねた時の言葉




…ああ、そういえばあれが最後だな


花子の笑顔を見たのは





そんでもって僕との未来を花子に見限られた日


ここ最近何度思ったか知れないが…




「……やり直してー」


切実に。






ゴツンと立てていた膝に額をぶつけ項垂れていると、肩に掛けていたタオルが引き抜かれそのままソファを挟んだ後ろからワシャワシャと優しく髪を拭かれる


「風邪引いちゃうよ?」



高くも低くもない声色と優しい手つきにぽっとろうそくが点る様に心が暖かくなる

こんなに拗れる前も同じ状況なんか数えきれないくらいあった筈なのに当たり前と享受していた


どうして花子はずっと僕の事を好きでいるだろうと勘違いが出来たのか



くるりと身体を後ろに向けた僕はそのまま花子の華奢な身体を抱き締め胸辺りに顔を埋めた

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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時

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