お姉ちゃんを好きな人【五条悟】

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そういえば以前「誕生日にとびっきり良い物あげる〜」と悪戯めいた笑みを浮かべていた

まさかこれのことだったのだろうかと推測立てながら、大きな一粒ダイヤの付いた指輪を見る


ずっと自分が求めていた形のある結婚の証だが、自分達は既に離婚した仲

どう考えても必要なものとは思えない




私の事を好き…？



誕生日に渡そうと思ったなんて…それはまさに彼がはっきりと姉を選んだ日だった



しかし、悟のこの表情は何？

まるで本当に私を好きかのように…





私の脳内は、見掛けからは想像出来ない程パニックになっていた


だけどひとつだけ確かな事がある





「……ごめんなさい」


私の謝罪に悟の顔の赤みがさっと引いていき表情が強張る




どうしても頭から離れてくれない


あの日の悟の後ろ姿が
振り払われた手の感触が



私はきっと今までのように、ただひた向きに悟を好きでいることは出来ない



もう怖くてこれ以上進めない





「私の事を好きだって言う悟の言葉を手放しに信じることは出来ない…悟だからじゃなくて、誰かに好きになって貰える未来なんて想像できないの」



誰かに選んで貰いたかった


でも私は私が大嫌い

私だったら、絶対私を選ばない


なのに誰かに選んで貰おうなんて




…そんなこと許される筈ないのに




「…だから、ごめん。受け取れない」


「……」


「私はもう…誰かの隣に立つことはできない」



指輪を持つ悟の手を押し出す

悟はされるがままに指輪を引き寄せる形を取るが瞳は朧気に指輪を見るだけで何を考えているのか分からない


…しかし、ふっといつもの様に瞳に強い意思を宿し勢いよくこちらに顔を上げる


驚きに私の肩がビクリと跳ねたが、悟はお構いなしに顔を近付けてきた


嫌な予感…


溌剌とした悟の表情からは経験上ロクなことがない





「じゃあ今度は俺の番ってことで！」

「……ばん…？何が？」


意味が分からず眉を寄せる

何だろう
一緒にいた時より今の方が断然悟のやることなす事が理解できない

一体離れていた半月程で何があったんだろう



「また一緒に暮らそうよ」


「……」


まさかの振り出しに開いた口が塞がらない


…あれ？

私の気付かない間に時間が巻き戻った？

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