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B組とF組は、案の定特に接点はなかったけれど、火曜日の英語がF組のあとがB組で、のんちゃんはときどき「プリント貸して」とやってきた。
「はい小瀧」
私の前の席のシゲが振り返る。
「いや、シゲには借りひん」
「なんでやねん」
「俺今日当たんねんて」
「だから貸すって言うてるやん」
「字汚いもん、シゲ」
「綺麗やって!見ろや!」
「お前6とbわからないの典型やからな」
「このプリント数字出てきてへんて」
言い合う二人を笑って見ていたら、のんちゃんが「はーやーく」なんて言ってきて、結局プリントを渡した。
写真と一緒にいろんな景色が蘇ってきて、思い出と名前をつけるのが、少し寂しい。
さらにめくっていけば、部活の集合写真。
サッカー部はみんなでユニフォームを着て、肩を組んでいた。
のんちゃんは後ろの列で藤井くんと肩を組み、楽しそうに笑っている。
負けたら終わり、という選手権の県予選。
勉強の合間に何日か応援に行った。
勝った試合は、にこにこと笑って最後に応援席までみんなで挨拶に来たときに、必ず一瞬目を合わせてくれるのが嬉しかった。
負けた最後の試合は、みんなベンチに座って下を向いていた。
のんちゃんもシゲも藤井くんも、みんな顔を覆って泣いてて、神ちゃんとユウちゃんと一緒に帰りながら、私達も少しだけ泣いた。
『応援ありがとう』と一言のんちゃんからメッセージが届いて、『おつかれさま』と返したあの日の夜。
次会ったときには「もう勉強ばっかやわ」と笑ってた。
.
「A」
のんちゃんの声に、アルバムから視線を上げる。
「今までありがとう」
「えっ…私こそ、ありがとう…」
フハッ!と笑ったのんちゃんが、「一口ちょうだい」と私のジュースに手を伸ばした。
「明日泣くかな」
「式は泣かなそう」
「わからんで、校長先生がいきなりめっちゃ感動的な話する可能性も」
「あれ、Aやん」
二人で笑っていたら聞こえた声に顔を上げると、のんちゃん越しにスーツ姿の照史くんがよっ、と軽く手を挙げた。
「うわ、びっくりした」
「俺もいますけどー?」
「おう、望」
「照史くんお仕事は?」
「今出張から帰って来てん」
「なに、卒アル?」
照史くんが覗き込んで言った。
「うん」
「えっ、二人もう卒業?」
「明日」
「うわっ、マジか」
私が照史くんから『出張』という言葉が出て来たことに驚いたことの何倍も驚いた様子で、照史くんが笑う。
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りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした!まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです! (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花音 | 作成日時:2017年3月27日 22時