132 ページ12
「帰るか。あ、なんか買う?」
「ううん、大丈夫」
歩き出すと、「うで」とぽつりと呟いたのんちゃんに、きゅう、となった心臓を抱えてもう一度のんちゃんの腕を持った。
「……のんちゃん」
「なあに?」
のんちゃんの優しくて甘い声も、これだけ長く知っていて、初めて聞いた。
「…たぶん、一緒やと思う」
んふふ、と溢れたのんちゃんの笑い声が夜道に浮かぶ。
ずっと、のんちゃんと一緒に。
言葉にするには無責任かもしれないけれど、神様にくらいお願いしたっていいはずだから。
「…さんねん」
のんちゃんがゆっくりと口を開いた。
「おんなじクラスが良かったなー」
また少し明るくなったトーンの言葉と一緒に吐き出された、照れ隠しみたいな笑い声。
「ね」
一年生のときも二年生のときも、私は思っていたことだから、やっと重なった願いが嬉しくて仕方ない。
少しだけ切なさを滲ませているのは、三年に上がる時はクラス替えがないから絶対にあり得ないってこと。
「教科書借りにいこ」
「遠いやろ」
ハハッ、と楽しそうなのんちゃんの声。
「…でもまあ、十分やけどね」
ゆっくりと言葉を紡けば、のんちゃんが私を見下ろす。
「……つきあってる、ってだけでも、十分やで」
「なんか、それ嫌」
「…え?」とのんちゃんを見れば、少し口を尖らせている。
「Aの方が下みたいっていうか、対等じゃない感じする」
「……」
「俺が付き合いたくて、告白したし、俺もAが好きやねんけど」
斜め下に下としていた視線を、少しこちらに向ける。
「…まあ、クラス替えとかはどうにもならへんけどさ。付き合ってるだけで十分、とかはあんま思わせたくない」
甘く溶かされて、胸が苦しくなって、のんちゃんが好きだな、と思った。
「…ありがとう」
そう言えば、「馬鹿にすんなよ!」なんてわざとらしく叫ぶのんちゃん。
「この程度の男じゃあらへんぞ!」
「フフッ」
「もっと上があるんやからな。十分のさらに先が」
「ほんまにもう」なんて呟くのんちゃんに笑う。
もう胸はいっぱいなのに、「大切にするって偉そうに宣言したしな」と前にお母さんに言っていた言葉を蒸し返すから、鼓動がさらに速くなった。
2050人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした!まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです! (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花音 | 作成日時:2017年3月27日 22時