105＊Daigo Side ページ12
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その夜のバイト終わり、詩織ちゃんは一緒に帰りたいって俺を待ってた。
最寄りの駅まで自転車を押して送りながら、結局誰からも有能なアドバイスをもらってない俺は、悶々と思考を巡らせてると、
「昔、Aさんが大吾さんに見向きもしないくらい好きな人の曲って、どんなのだろうって興味本位で聞いてみたことあるんです」
詩織ちゃんが口を開いた。
詩織ちゃんの口から出るAの名前には、いつも心臓が貫かれそうになる。
「正門の曲？」
「はい。なんかあのーホットティー買ったら、CMの曲が配信されてて」
イレブン飲料のやつか。
キャンペーンシールを貼り付けたAのスマホカバーがふと脳裏に浮かぶ。
「思ったよりよくって。なんかまるでわたしの気持ち歌ってるみたいで。最近もよく聞くんです」
背の低い俺よりも更に頭一つ分小さい詩織ちゃんは、前を向いたまま話し続ける。
「あの曲みたいに、わたしの気持ちは今もずっと一方通行なんやって思うんです」
わかりすぎる痛みが、ぎゅっと心臓を鷲掴みにする。
だって、それは、俺の歌や…
ふうっとため息をつくと、詩織ちゃんは足を止めて俺の方を見た。
「大吾さんの気持ち、近くにいたら、一緒にいたら、変わるかなぁって思ったのに、全然変わらなくて、なんか疲れちゃいました」
表現できへん罪悪感に、自転車のグリップをぎゅっと握りしめる。
俺が好きなのは、詩織ちゃんやでって心の底から言えたらいいのに、
「俺、詩織ちゃんにたくさん救われてるで」
都合のいい言葉を選ぶ自分が情けない。
「なんでそんなにいい人なんですか」
詩織ちゃんは目にいっぱい涙をためて、呆れたように笑った。
「もともとはわたしのわがままな告白つきあってもらったのに、こんなこと言ってすいません」
大きな瞳からひとすじ涙が頬を伝う。
「わたしと別れてください」
夜の寒さの中、頬を伝う涙の温度を想像したら、言葉が出てこない。
「わかった。傷つけてごめんな。そばにおってくれてありがとう」
拒否する理由もなくて、小さな頭をそっと撫でると、
「最後に言ってあげるとしたら」
詩織ちゃんが俺の手を振り払った。
「そうやって優しいから、ずっといい人止まりなんですよ」
詩織ちゃんは、ぺこりと頭を下げると駅の中へ消えていった。
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Bear(プロフ) - 最後に涙腺が崩壊しました。こんなに最高な作品にはしばらく会えなそうです (2021年12月14日 22時) (
レス) @page45 id: 3daf0f2645 (このIDを非表示/違反報告)
むたむた - どんでん返しに泣きました。夜通し読んじゃいました。ステキな作品をありがとうございます！！！ (2021年6月3日 4時) (レス) id: 738b505511 (このIDを非表示/違反報告)
林芽亜里 - 一気に完結まで読み尽してしました！！もう素晴らしすぎて(*´∇｀*)最初は、正門くんとハッピーエンドを迎えると思っていたけど、大吾くんと最終的に結ばれて、思ってもいない展開でビックリしました(^｡^)幸せな時間をありがとうございました(#^.^#) (2020年5月27日 22時) (レス) id: 9f77b0a91a (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - もう最高でした！！大好きなまさにしのお話ってだけでも嬉しかったのにこんな素敵なお話、もう最高すぎました！この作品の大ファンになりました！！楽しい時間をありがとう！また書く機会があったら楽しみにしてます！！ありがとうございました！！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: db8a594314 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 初めは正門くんとエンド迎えるんかなって思ってたんですけど最後西畑くんと幸せになっててびっくりとよかったなって涙出ました！！ (2020年4月15日 23時) (レス) id: ee2a92e956 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華音 | 作成日時：2019年5月16日 22時
