君へのSong (ページ50)

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「すいません…」

体の力が抜けてその場にしゃがみこんでしまう。

「これ、お仕事…CM…大丈夫ですか…？」

「最善は尽くすけれど、どうかしらね。スポンサーも当然警戒するし、大量についた女の子のファンはどうなるか。わたしたちの努力も水の泡かもしれないわね」

彩月さんは鬱憤を晴らすようにまくし立てる。

「もうやめろ」

凍りつくような声がして、大吾さんの手がタブレットを取り上げた。

「十分やろ」

大吾さんは殺意のようなものを纏って彩月さんを睨んでいた。

「その様子じゃ、売ったのは本当にあなたじゃないのね、西畑さん」

彩月さんはなにがおかしいのかクスクス笑った。

写真を売った犯人だと疑って、彩月さんは大吾さんを呼び出したってこと…？

「失礼なこと言わないでください。大吾さんがそんなことするわけない」

わたしはぎゅっと拳を握りしめて立ち上がった。

「仕方ないじゃない。調べさせたらこの日、あんたたちも一緒にいたんでしょ？」

確かに大吾さんに送ってもらったけれど、大吾さんがそんなことするはずがない。

「1番、ありえるじゃない。本当は2人が別れてほしいって思ってたでしょ？西畑さん」

彩月さんの口は異世界の言葉を発しているように理解が追いつかない。

「お前…仕事できるんかもしらんけど、ほんまに性格悪いな」

「歌詞に出てくる『君』はAさんのことでしょ？いつもワンパターンだし、何曲か聞かせてもらってあぁなるほどねって思ったわ」

どういうこと？

2人の応酬についていけない。

「今回のことで西畑さんとAさんのこと調べさせたら、バイト先も大学も同じだし、夜はわざわざ家まで送ってるみたいだし…」

「黙れ、それ以上喋るな」

「もしかしてAさんにも言ってないの？西畑さん？」

彩月さんは目を丸くして大吾さんを見た。

「おい、ほんまにやめろ」

大吾さんは必死に手を出すのを抑えているみたいだった。

「正門さんの曲の作詞をしてるのは、全部、西畑さんだって」

キャンペーンシールをたくさん貼ったわたしのスマホが手から滑り落ちて、大きな音を立てた。