君へのSong (ページ5)

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「遅刻厳禁、マイナス500円、給料から引きまーす」

バイトリーダーの大吾さんが、レジを開けながらニヤニヤ笑っている。

「間に合ってるじゃないですかぁ！！」

まぁ確かにシフトの5分前には入れって散々言われてるけれど、どうしても朝は弱くてギリギリになる。

「どうせ遅くまで遊んでてんやろ。これやから大学生は」

「いや、大吾さんだって大学生じゃないですか！」

大吾さんはわたしより一つ上で、同じ大学の3年。

21歳ってことは正門さんと同い年かぁ。

「大吾さんはもうちょっと遊んだ方がいいですよ～」

「はぁ？」

「そんなバイトばっかりしてるから、彼女できないんですよー！」

「うるさ。自分のことは棚に上げてよう言うわ」

「好きな人はいますもーん！」

「いや、きいてへんし」

ブツブツ言う大吾さんに言い放ち、制服のエプロンを締めながら、ドリンクバーの補充に向かう。

大吾さんは高校生の時からこのファミレスでバイトしているらしく、最早店長よりなんでも知ってるやばい人。

歳の近いわたしには憎たらしい口ばっかり叩くけれど、無駄にかわいい顔と長年培った『スーパー接客モード』は神がかっていて、おばちゃんパートやお客さん受けはめちゃくちゃいい。

まぁ突然ライブで飛んでいく私のシフトに融通をきかせてくれるから無下にはできないんやけど…

「大吾さんもねー！音楽とか聞いた方がいいですよ！恋の歌！」

「別に彼女できへんのとちゃうし、作らんだけやし」

「あ、そや！後でCDあげますね！」

「それってもしかしてAが追っかけてるやつの？」

「はい！めちゃくちゃいいんですよ～！甘い声と繊細な歌詞が！」

「ええわ。絶対いらん」

大吾さんはやれやれとでも言いたげに売上チェックを始める。

いつもペンとノートを持ち歩いて、照らし合わせてまるで社員。

確か生物学科とか言ってた気がするけれど、人間にはあんまり興味がないらしい。