君へのSong (ページ32)

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Yoshi来てくれてありがとう。楽屋まで来てくれへん?

ライブが終わるとスマホに正門さんからのメッセージが表示されていた。

話を通してくれていたのか、関係者入り口に声をかけるとすんなりと中に入れた。

「昨日はほんまにごめん」

大事なワンマンライブの後やのに第一声であやまってくれる正門さん。

「お仕事だから仕方ないです」

精一杯の見栄を張ると

「Aちゃん、今日来てくれへんかと思った」

正門さんは力が抜けたように椅子に座り込んだ。

「正門さんのファンやのに来ないわけないじゃないですか」

そっと近づくと

「だって最初見つけられへんくて、おらんかと思ってん」

正門さんは俯いたままわたしの手をぎゅっと握った。

そんなふうに言われたら、またいらない期待をしちゃう

「ほんまにほんまにごめんな」

「もうやめてくださいよ！それより新曲！さわやかで切なくって素敵でした！CMもおめでとうございます！」

「うん、ありがとう」

わたしは元気づけるように握りしめられた手をぶんぶんと振った。

「正門さん、何してるの？」

突然よく通る女の人の声がした。

振り返るとドアの前に立つ彩月さん。

「あ…いや…その…」

わたしたちは慌てて手をほどく。

「言ったでしょ。特定のファンの子を贔屓しちゃ困るって」

コツン、コツンとハイヒールの音が響く。

「CMも決まって、契約もしたんだからもうお遊びじゃないのよ。正門さんは大事な商品なのよ？自覚してる？」

「はい…すいません。でもAちゃんはファンっていうか…」

正門さんが言い返す前に、彩月さんはわたしの顔を覗き込んだ。

「…貴方もよ。この間の打ち上げもいたみたいだけど、正門さんの迷惑にならないようにしてちょうだい」

「Aちゃんは悪くないんで！俺が呼んだだけで…」

「それがダメって言ってるのよ。女の子のファンが多いんだから、変な噂はご法度よ」

彩月さんはぴしゃりと言い放って出て行った。

あまりの剣幕に静まり返る楽屋。

「ごめんなさい…帰ります…」

また迷惑かけてしまったんやろうか…

そう思うと涙が出そうになって、

わたしはくるりと背を向けた。

「Aちゃ…」

ひきとめようとする正門さんの手を振り払って、

わたしは関係者出口まで走った。