君へのSong (ページ13)

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＊

数日後。

「何話してるんですかね…泣きそう…」

「仕事しろー、仕事！」

「大吾さん知り合いですか？」

「いや、初めてみたけど」

わたしがバイトに入ると、正門さんが来ていた。

正門さんの前に座っているのは、めちゃくちゃ綺麗
な女の人。

真っ黒で長い艶々の髪に、切れ長の目。

パンツスーツを身にまとい、真っ赤な口紅をひいたその人はまるで菜々緒みたいな美人で、楽しそうに正門さんと話し込んでいる。

「大吾さん何者なんかきいてきてくださいよ…」

「いややわ。なんでやねん」

ホールの入り口で大吾さんと小突きあっていると、

菜々緒似が、店員を呼ぶ陽気なベルを押した。

「大吾さん行ってー！！」

「ちょ、押すなや」

オーダーをとって、戻ってくる大吾さん。

「なんか音楽事務所の人やって」

「事務所？？！！！」

「うん。昨日、声かけられたらしいで」

「デビューするんですか？」

「んなすぐあるかい。はい、手を動かす！」

知り合ったの昨日か…とちょっとホッとする。

2時間後、わたしの前に座る正門さん。

菜々緒似はあれからすぐに帰っていった。

「昨日、ライブ後に声かけられたんよ。音楽関係の事務所の人らしくて」

「世間がやっと正門さんに追いついてきたんですね…」

「いやいや、事務所に入るには全然実績が足らんから、まずはそこからやって」

正門さんはドリンクバーのコーヒーをすする。

「でも。音楽雑誌の編集者の知り合いに頼んでくれるらしくて、その特集に載せてもらえるかもしらん」

「怪しい事務所と違うん？」

私服に着替えた大吾さんがやってきた。

「大吾もきいたことある事務所やと思うで」

正門さんが取り出した名刺には、誰もが知ってる会社名のロゴが印刷されている。

「うわ～！まじやん！」

大吾さんが興奮したように名刺を手に取った。

「せやろ」

嬉しそうに笑い合う2人に、変な疑ぐりをかけた自分がちょっと恥ずかしくなる。

正門さん有名になるんかな…