君へのSong (ページ21)

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「詩織ちゃん、明日ね、応援してるミュージシャンのライブあるんやけど、見にこやん？もちろんチケット代はいらんし…」

わたしはいつものバイトの制服のポケットからチケットを取り出した。

「Aどこでもかんでも配るなよ。ごめんな詩織ちゃん変なやつで」

「…すいませーん」

詩織ちゃんは、最近入ってきたバイトの新人さん。近くの女子大の一年生。

今は大吾さんがつきっきりで教育中らしい。

艶々の細い黒髪に色白な肌と大きな瞳が特徴的で、お上品でかわいくてこんなふうに生まれたかったなって思っちゃうような女の子。

「シフト希望はこの紙に書いて、月末までに出してな。ぎりぎりにしか出さへんやつもおるけど真似したらあかんで」

「はい！西畑さん」

「あー、大吾さんでええよ。なんか店長もパートさんもみんなそう呼ぶから」

「わかりました、大吾さん」

「大吾さん、鼻の下のびてますよー！」

お皿を回収しながらもう一回茶々を入れに行くと

「ほんまうるさいな。仕事せえ」

「こわー！気をつけた方がええよ。この人バイトの鬼やから」

「ふふっ。仲良いんですねお2人」

口元に手を添えて笑う詩織ちゃん。

「わからんことあったら俺に聞いてな。Aはちょっと脳内アレやから」

「よろしくお願いします。Aさん」

「アレってなんなんですか。ひどー」

明日は正門さんの対バンの日。

出演バンドのリストはなかなか名の通ったグループばかりで、悔しいけどさすが彩月さんって感じ。

ちゃんとしたライブハウスでの正門さん、楽しみやな…

思わず緩む頬を引き締めながら、わたしはオーダーを取りに向かった。