君へのSong (ページ18)

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1ヶ月後には、正門さんは地元じゃちょっとした有名人になるくらい、ストリートライブに人が集まるようになった。

彩月さんの提案で始めた動画サイトでの配信で、イケメンギタリストとして人気を博したらしい。

すごく誇らしいのに少しさみしくなるのはわたしの悪い癖。

演奏が終わるとCDを手にした女の子たちが、サインくださいと集まっていく。

わたしはそっとその場を離れてコンビニへ向かう。

夜の風が冷たい。

「ごめんな待たせて」

さっきまできいていたのに、その声に胸がぎゅっと苦しくなる。

「全然っ。今日も最高でした！」

わたしたちはライブ後、彩月さんとの打ち合わせがない日はコンビニ前で落ち合うようになった。

夜風がふわりと冷たいけど、正門さんの顔を見るとそんなの全然気にならない。

「配信の再生回数もすごいですね」

正門さんに手渡されるココアを受け取る。

「ふふ。見てくれてるん？」

「もちろんです」

「今度ちゃんとした会場で、対バンやらせてもらえるかもしれへん」

「ええっ？！すごい！ほんまですか？」

思わずココアを落としそうになって握りしめた。

「うん、彩月さんがセッティングしてくれてる。今作ってる新曲もそこで披露できると思うし、Aちゃん絶対見にきてな？」

正門さんがくしゃっと笑う。

「はい！！何回でも！」

飛び上がりそうになりながら答えると

「いや一回やけどな」

正門さんが笑っている。

「あっ…そっか」

恥ずかしくなって俯くと大きな手のひらがわたしの頭をくしゃくしゃ撫でていた。

「かわいすぎ」

どんなつもりで言ってるん…？

熱くなる頬がバレないように俯いたままでいると、くいと優しく顎を持ち上げられた。

「Aちゃん、リップ変えた？」

「え…？」

「なんか前より赤いなーって思って」

正門さんが真っ赤なリップが綺麗って言うからです…

なんて言えるわけない…

「変ですか…？」

「いや、大人っぽくてええよ。でも俺はいつもの方が好きやなぁ」

正門さんは

ずるくてずるくて、

瞳をとらえて離してくれない。

奮発して買ったシャネルの口紅が塗られた唇をきゅっと噛むと、

化粧品とココアが混ざった不思議な味がした。