【銀魂3z】勘弁してくれ沖田君

前夜祭 ページ37

「あーもー!引越しの話は止めにしよ!!なんかしんみりしちゃう」

「そーか?」

「そーなの!!ホラ、せっかく主催したんでしょ?総悟も花火やらなきゃ」

「ヘイヘイ」


適当に目についた花火を総悟に渡す。
火がつくと、わっと光の雨が溢れ出す。それは燃え進む程に、赤、緑、青とさまざまな色に変化する。


「……」

「何よ、その目」


ジットリした目で花火を見る総悟。
そんな目をしていたら、その花火はすぐに終わってしまった。


「いやなんか、想像してた3倍くらい楽しく無ェなと思って」

「何でよ!!花火楽しいじゃない!!」

「それはアンタの頭が幼いからで」

「なんですって!?」


普通に失礼だぞ今のは!!……というか、別に私も花火自体にそこまで期待なんてしていない。
私が期待しているのは、むしろ。


「こんなの、みんなでやるからこそ楽しいんでしょ」


そう言うと、総悟はニッと笑った。
いつもの、ニヒルなやつとかろくでもないこと考えてそうなやつじゃないやつ。
もっと幼い、昔よく見ていた笑い方。
喉の奥から、何か暖かいものがふつふつと静かに湧き上がるのを感じる。

多分、私はこの笑顔が好きだ。


「Aー!入ってたネズミ花火するアルよ!!見ないアルかー!!」


神楽の声がする。
本当はもう少しこのままでいたかったが、それは今はいいか。

明日で、良いや。


「今行く!!」


だって、今日で終わりなわけじゃない。


「いこ、総悟」

「へい」


総悟の手を取る。
大丈夫、最後じゃない。
だってこれは私達にとってはただの前夜祭だから。

明日がある。たったそれだけ。
今までなら普通だったことが、普通に思っていたことが、こんなに私の中で暖かく響く日が来るなんて。
こんな特別なことに思える日が来るなんて。


今日で最後じゃないから、今日は私だけの総悟だなんて心の奥で思うのはやめておくよ。
私は君にみんなと笑っていて欲しいから。

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