【カゲプロ】私の高校に転入してきたのは、鹿野くんでした。*２* (ページ7)

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｢位置について、よーい……｣

審判がそう言うとピストルの音が校庭中に鳴り響き、両隣でクラウチングスタートの体勢をしていた２･３年生が机の上に置かれた数枚の小さな紙めがけて走り出す。
あぁどうしよう、少し出遅れた……!!
そう思いながら走って机の上にある最後の１枚を手に取って見てみると、そこには｢髪をヘアピンで留めている男の人｣と書かれていた。

｢ヘ、ヘアピン……って、しかも男？｣

ヘアピンで髪を留めている男の人なんて、いるのかなぁ？
そう思いながら私は来賓席から客席まで、ぐるりと見回す。
いや、やっぱりそんな人いる訳が……。

｢……いた｣

係席に座っているその中の一人。黒い前髪を左側で分け目を変えるかのように黄色いヘアピンを留め、隣に座っている白くてもこもこした髪の女の子と爽やかな笑顔で話をしている男の人がいた。
本当にいるんだ……そう思いながら私は、その人の方へ走る。

｢……あ、あのっ!! ちょっと来てくれませんか!?｣

｢え、俺っすか!?｣

その人は私がそう言うと目を丸くして立ち上がり、私の方に駆け寄ってきた。
……って、背高っ!! この人修哉よりも背高いんじゃ……じゃなくて、早くしないと!!
そう思いながら私は、その人の手首をぎゅっと掴んで走り出す。
私達の向かう先には、白く細長い布が係員によって両端を持たれていた。

｢――ゴール!! １位、1年1組！｣

……って、えっ!? １位!?
驚きながら後ろを振り返って見てみると、２･３年生はまだ借り物が見つかっていないようだ。すると、私の横から爽やかな声が聞こえてきた。