検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:359,714 hit

____…第45話…____ ページ45

「フジさんっ!!」

私、絶対に変な顔だろうな。でも、いいや。
泣いている私を見たフジさんは、何も言わず、微笑んだ。

まるで、何があったか分かっているようだった。


「ヒラならさっき、『ちょっと散歩して来る』って言って、お城を出て行ったよ。」

「分かりました!」


走り出そうと、くるっと後ろを向くと、フジさんに、優しく腕を掴まれた。
え?彼の顔を見ると、無表情から、ふっと微笑んだ。


「……ヒラを、よろしくね。」


急に言われてびっくりしたが、こくっと頷いた。
本当、貴方にもたくさん迷惑をかけた。でも、こうして最後まで、支えてくれる。

「本当に、ありがとうございます。フジさん」


初めて彼と出会った、あそこへ走る。
予想通り、大好きな、白いパーカーの背中が見えた。木々が揺れ、小鳥の鳴き声が聞こえる。

彼の緑色の髪の毛も揺れた。



「ヒ……国王!!」



白く光る湖を、あぐらをかいて眺めていた国王。

私の、大好きな人。



「…………ちょっと。」


今から感動のシーンなんですよ。雰囲気で分かるでしょ?

なのに………



「なんで湖に落っこちてんですかアンタは!?」



私が声をかけた瞬間、彼はビクッと肩を揺らし、湖に落ちた。

走って近付くと、国王は、全身ビチャビチャになって、這い上がって来た。


…顔が死んでいる。



「…………なに。」


少し素っ気ない。いや、寒いのかな。取り合えず、ハンカチで国王の体を拭いた。

彼のパーカーに触れると、また肩を揺らす。

どうしたのだろう。私だって、国王に触れるのは勇気がいる。
すごく緊張するし、触れた指先には熱が集まる。


すると、いきなりガッと肩を掴まれた。

持っていたハンカチが、芝生に落ちる。水でペッタンコになった緑の髪の毛から、一滴の滴が落ちた。


「あ、あのさ………秘書って、その………」


待って、顔が近い。心臓がもたない。
国王の甘い香りが、鼻をくすぐる。香水は付けていないだろうから、シャンプーの香りだろう。

それに、顔が焦っているというか、赤いというか。

すると、国王は目をつむり、ブンブンと顔を横に振った。水が飛び散る。



そして、深呼吸をして、ゆっくり私から離れた。
え、なんなの…!?


そして、顔を上げた。二回しか見たことの無い、真剣な表情。

綺麗に透き通る国王の瞳は、私の心を捕らえるには十分だった。



「…あのね。」


いつもの笑顔がなく、緊張しながらも、「はい」と頷いた。

____…第46話…____→←____…第44話…____


ラッキーアイテム

大きなカマ


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (489 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
602人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あみ - 本編最高すぎてこちらも読ませていただきましたが、、、いや本当に神です以上!!(?)本当に好みというかなんというか。ヒ.ジ.キ.の小説で一番好きかもしれません。こ.ーす.け.をのけ者扱いにしているような小説が多いイメージがあったので。この小説が本当大好きです! (2021年7月25日 14時) (レス) id: 2c5fd51ba4 (このIDを非表示/違反報告)
みー - すごく、すごく良かったですっっっっっ...!(大号泣) (2019年11月22日 7時) (レス) id: 7c0d6b05b3 (このIDを非表示/違反報告)
かえで@utaitelove(プロフ) - もう最高です…!!感動したと思ったら次はキュンキュンしてほんと私の心臓どうしてくれるんですか!影葉さん最高です( ;∀;)他の作品も全部読ませて頂きましたがほんとに天才ですね!?これからも頑張ってください (2019年1月1日 21時) (レス) id: a0615ac09b (このIDを非表示/違反報告)
アンジ* - 今になってもずっと読んでます!狂った国の王子様、こーすけが出てきたシーンで大号泣してしまいました。番外編、ぜひ読みたいです!影葉さん、感動をありがとうございました! (2018年8月20日 20時) (レス) id: a0d4f82c90 (このIDを非表示/違反報告)
夜猫 - ヒラ可愛い!死にそう! (2018年2月3日 5時) (レス) id: c27b932811 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:影葉 | 作成日時:2015年12月5日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。