死ぬのが少し早くなるだけ ページ15
「おいA」
唐突に、切羽詰まった顔で呼び止められた。
それは私が睡眠から目覚めたその日の夕方のことだ。
看守の一人が私の肩を掴んだ。
「ど、どうしたんですか?」
変な胸騒ぎがした。
寝ているときだって悪夢すら見て、寝ていたようで実際はちゃんと眠れていたわけではない。
ドクンドクンと嫌に心臓の音が大きく聞こえる。
こういう勘、というやつは誰でもよく当たるものだ。
背中に冷汗が流れた。
看守は2、3回深呼吸をして言った。
「――桂さんの、処刑が決まった」
頭の中の理解が遅れ、即座に反応することができなかった。
それからしばらく、すべてがスローモーションになって気づいた時には床に座り込んでいて、私を心配した看守が私の顔を覗き込んでいた。
「処刑・・?」
口に出してようやく意味が頭の中に入ってきた。
「なっ、なんで急にッ!」
「囚人たちが一つになり始め、上が危機感を持ちだしたんだ」
「でも・・!」
上に言いたいことは反論するまでもなくわかっている。
このまま囚人たちが一つになり脱獄を企てることを恐れ、その長である桂小太郎の処刑を決定したのだろう。
「それにここに居るのは、終身刑の囚人たちだけだ」
「死ぬのが少し、早くなっただけ」
「ああ」
言葉にすると虚しさが広がった。
沢山の物を私にくれた桂さんが死ぬ。
今まで脱獄を企てさらし首になった囚人たちはそれなりに見てきたし、年老いるまで働いたものも見てきた。
なのに、こんな気持ちになるのは初めてだ。
――彼とずっと居たい。死んでほしくない。
「あ、おいっ、どこ行くんだよ!」
そう思うと、体が勝手に動いた。
立ち上がった私の腕を、反射的に看守は掴んで引き留める。
「行かなきゃ」
「だめだ!お前どうなるかわかってんのか!?お前も打ち首だぞ!」
「どうせ私もここに終身刑だから・・死ぬのが早くなるだけです」
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ゆり(プロフ) - あれ?終わりですか!?とても面白かったので残念です…。 (2017年5月7日 13時) (レス) id: 16a2a2c0ee (このIDを非表示/違反報告)
蝸牛 - かっこいいです!更新頑張ってください! (2017年1月21日 11時) (レス) id: 9c8917c2ad (このIDを非表示/違反報告)
みくり - 続き気になります!!更新頑張ってください!!!! (2016年11月9日 6時) (レス) id: a243a73ee4 (このIDを非表示/違反報告)
霧助(プロフ) - かぁつらさん!!イケメンですね!更新頑張ってください! (2016年8月23日 13時) (レス) id: 680443222a (このIDを非表示/違反報告)
神阿(プロフ) - 紅夜桜さん» コメントと誤字訂正ありがとうございました!がんばります!!! (2016年7月31日 21時) (レス) id: d25d67767d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神阿 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kamiamatome/
作成日時:2016年6月19日 22時