事件２日前 ページ5
貴方side
今日は乱歩さんの異能で「孤児院に行け」と。「行けばいいことあるよ」＿その言葉を信じて、
育った孤児院に来た。誕生日に。
武装探偵社からの連絡を受けたからか、門番はボクを見るなり
「79番か」
と問うた。「はい」と答えると、すぐに院長室に通された。
院長「早かったな、79番」
と先生は云った。
「ボクを79番と呼ばないで下さる？」
ボクは云った。震えを抑えながら。
院長「卒業式には、間に合ったな。」
瞬間、後ろの鉄扉が閉まった。密閉された感覚に恐怖を覚えた。
「そｯ、卒業式…とは何？」
院長「此れだ。」
そう云って先生は白い箱を手に取った。掌よりも少し大きくて、リボンなどといった飾りは無い。
「その箱は何ですかｯ！」
完全に声は震えていた。
院長「此処から卒業するための物だ。…私の教えを憶えているか？」
院長が一歩一歩近付いてくる。
「ええ憶えていますとも。『人を守らぬ者に生きる価値など無い』でしょう？」
先生がすぐ手前まで来ていた。ボクに向かって両手を広げている。
その行為の意味が全く理解できず、ただ硬直した。
そう云った院長は、ボクを抱擁した。
院長「頑張ったな、幸せになりなさい。そして、誕生日おめでとう」
「…先生。ボク、武装探偵社に所属したんだよ。人を守っているよね、生きる価値はあるよね。」
＿数刻後
「…では」
院長「頑張りなさい」
「はい」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
社に戻ると、其処には、「ね、云ったでしょう？」と言いたげな乱歩さんがいた。
ボクの左手首を見て、「おや」と云うように固まったが、すぐにまたラムネを飲み始めた。
何故なら、左手には、院長から貰った腕時計が巻いてあったから。
紫色の、中に猫が描かれている、可愛い時計が。
此れは、一生大切にすると決めた、「宝物」だから。
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作者名：いちごあめ | 作成日時：2023年10月24日 19時
