〜君との景色〜【短編集】

きっかけは(食うか？) ページ21

あー、また居る。

私が部活を終えて、帰るために駅に行くと、駅の蕎麦屋さんで仏頂面なんだけど、とても美味しそうに蕎麦を食べるイケメンさんがいる。

いつも一番端の席で食べていて、その長い脚を組んでいる。切れ長な目に真っ黒の綺麗な長い髪を横で縛っている。紺のスーツ姿からして、社会人なのは間違いないだろう。

あー、話したいなー！話したい！話したい！話したい！話したい！！

そう、私は一目惚れしてしまったのだ。その美味しそうに蕎麦を食べるイケメンさんに。

ん？やばい、イケメンさんが食べ終わってこっちに来る！いつも見てることバレたら、それこそある意味やばいよっ！そう思い、不自然に思われないように下を向く。

って、あれ？足音が私の前で止まった？ゆっくりと顔を上げると、イケメンさんがこっちをじっと見ている。横顔もイケメンだったけど、前から見たらもっとイケメンだな！…じゃなくて！！やばい状況だよっ！怒られる？！

｢おい｣
『…は、はい』
｢お前、一緒に蕎麦食うか？｣
『…へ？』

いきなり、蕎麦食うか？ですって？！な、な、なんと！嬉しいったらありゃしない！！(でも、これ、イケメンさんだから許されるんだよ。イケメンさんじゃなかったら、叫んでるわ)

『は、はい！』

イケメンさんの隣りに座る。
どうやら、神田さんというらしい。

｢お前、蕎麦、好きなんだろ？｣
『え？』
｢だって、ずっと蕎麦見てただろ。｣

…うん。この人勘違いしてるな。私が見てたのは神田さん！あなたですよ！なんて、言えるはずもなく、は、はい、そうです。と、頷いておいた。(開き直りも時には大切だよ。)ということで、神田さんには、私は蕎麦仲間として認識されてしまったらしい。

(こんにちは)
(あぁ)
(神田さん、蕎麦は〜〜〜らしいです！)
(………お前、俺より詳しいんじゃねぇか？)

好きな人のためなら、蕎麦のこと調べるなんて、朝飯前です！！

神田さんと話したきっかけは、お蕎麦でした。

(いつか蕎麦だけじゃなくて、もっと沢山の共通の話題で話せますように。)

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