〜君との景色〜【短編集】

缶あけ(…あ。) ページ14

今日もいつも通り会社に来て、仕事して…今はお昼休みなう。

あ、そういえば飲み物持って来てないんだった。……自動販売機でいいか。

小銭を入れて、ブラックコーヒーを買う。ガタンと音がし、落ちてきた缶コーヒーを拾って席に着く。

「いただきます。」

と、小さな声で呟き、箸で食べる。相変わらず色っ気の無いお弁当だなー。とか思いつつも、朝早いし仕方ないか。とも思う。

缶コーヒーに手を伸ばし、開けようとする。……が、開かない。私の仕事は事務のため、爪が常に深爪でなくてはいけないのだ。せっかく買ったのに！開けれないんですけど！！

缶あけに苦戦していると、私が持っていた缶コーヒーを横から伸びてきた手がひょいと取る。その手の方を見ると

『…神田さん…！』
「どうも。」

神田さんは、違う部署で働いているが、そこの部署によく私が顔を出しにいくから(書類届けたりとか)顔見知りというか、知り合いというか……

『あの、それ、私のコーヒー……』
「知ってますよ。」

すると、神田さんが缶の蓋を開けてくれた。
……そっか！私が開けれなかったのを見て、わざわざ来てくれたんだ！さすが神田さん。優しい！

『あの、わざわざありがとうございます。』
「別に、気にしないでください。」

すると、神田さんが

「俺も缶コーヒー飲みたかったんです。」
『あ、私奢りましょうか？』

奢るって言っても、たかが缶コーヒーだけどね。

「じゃ、少しだけ。」

そう言って、蓋の開いている私の缶コーヒーを自分の口に運ぶ。

『…あ。』

神田さんの喉からゴクリと小さく音がなって、神田さんの口がついたソレを私に渡す。

「ごちそうさまでした。美味しかったです。」

手に持った缶コーヒーは、まだ重くて、神田さんが少しだけ飲んだんだと、わかる。

『……あの、これ、飲んでもいいですよ？』

飲みたかったって言ってたし……

「いりません。あとは、浅野さんが飲んでください。」

えっ？だって、間接なんちゃらになってしまいますよ？

「それでは、俺、蕎麦屋に行くんで。」

そう言って、部屋から、出て行ってしまった。
……コーヒー、飲んでいいのかな？

(浅野さん。これで少しは俺の事、意識してくれねぇかな？)
(神田、大胆ですね。)
(えぇ。)

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