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134.夜からは逃げられない ページ34

「頭、此奴どうします?」

「やっちまいましょう!自分でも云ってたじゃないですか!」

「いや、だが一晩でどの程度の傷が治るのか……今でもヤバいだろう」


有り難いな。
混乱してくれたお陰で、縄が切れた。


「ぐずぐずしてないでやりゃあいいんですよ!!」


一番若い男が、痺れを切らして飛びかかってきた。
座っている私に攻撃しようとしているため、重心が著しく低い。

振りかざされた拳が私の腹に刺さる前に、自由になった右手で鳩尾を思いっきり突いた。
直前で私の動きに気づいた彼だが、前のめりになっていた上体を起こすには時間が足りなかったようだ。

カハッと空気を吐き出して、私の方に倒れてくる。
その体を反転させ、私の膝の上に倒れた男を抱き寄せ、その首元に刃を向けた。


「お前!いつの間に?!」

「はっ、敵に得物を与えてどうするんだ?」


私の手に握られているのは、拘束していた縄を切ったのは、最初に殴られた時に手元に落ちてきた大きめのガラス片だった。
お陰で私の手は血塗れで傷だらけなのだが。


「……そいつをどうする心算だ」

「見たまんま、人質だ」

「目的は?」

「決まっているだろう、解放だ」


それだけ告げると、相手方の頭と思しき人物は押し黙った。
仲間を見捨てないのはいいことだが、この社会においては致命的なほど甘い。

私だって無敵じゃない。
腹の短刀は刺さりっぱなしだし、出血量も多い。早めに片づけたい。
私は一言付け加える。


「別に、中也が来るまでこうしててもいいけど?」

「……くそっ!」


別に手を解放してから中也に連絡を取ったわけではないが、勝手にそう予想したのだろう。
私の手元に鍵が投げつけられた。

私はそれを拾い、目線を逸らさず、足枷と首枷を外した。


「それじゃあ、お邪魔したな」


歩くのも正直しんどいが、できるだけ気丈に振舞って、ガタガタと恐怖に震える男たちを置いて倉庫を出た。
甘ちゃんの彼らでも、ポートマフィアの報復については知っているらしい。
私自身このことを報告するつもりはないが、この傷で帰れば何があったか訊かれるだろうし、私が答えずとも情報を割り出すことは容易だ。
そうなれば彼らの予想通り、マフィアの報復がある。




――――却説、彼らは何日夜から逃げられるだろう?

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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2019年1月3日 1時

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