【文スト】ポートマフィアの人魚姫～second～ (ページ38)

今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:29,962 hit

泡が八十八ページ38

《――首領。私は、正直、貴方のことを如何思えばいいか解らない。厳しくて冷たい眼をしているクセに、偶に、まるで。まるで、親の様な目をする事があったから。私は貴方に囚われていたけど、貴方に保護されていた。矛盾ではない矛盾に今もまだ戸惑っている。でも、貴方が呉れたこの自由。大切に使って少しずつ自分を理解して、貴方も理解出来たらと思っている。貴方は、両親の大切な人だから。
　お世話になった皆様方、私は太宰と共に生きていきます。マフィアとしては裏切り者の名前を出されても困るかも知れないけれど。兎に角、私は今貴方達のお蔭で幸せな日々を送っています。本当にありがとうございました。
　海津A》

読み終えて、森は何かを堪える様にぎゅっと目を瞑った。
嗚呼、解らない。
今の此の自分の気持ちをなんと表現すればいいのか。

「のう、鴎外殿。Aは幸せになると、否、幸せであると云えるか？」

クスクスと着物の袖で口元を隠して上品に笑う尾崎に、

「そんな事、判り切った事では？」

森は口角を上げて、断言してみせた。

「あの娘が幸せになれる様に、私は最適解を導き出した。あの娘は屹度幸せだ」

森は手紙を丁寧に折りたたみ、懐に仕舞った。

「他の者に知らせんでもよいのか？」

「口頭で構わないだろう。特に中也君は最後の段の一行目で手紙を破ってしまうかも知れない」

森がそう云えば、尾崎が同意するように微笑んだ。

「それは困るのだよ。何せ、

――娘からの初めての手紙だからね」

大事そうに胸元を押さえる森は、父親の様だった。