泡が五十三 ページ3
「其れで、中也君。話とは何かね?」
クルリと椅子を回転させて振り返った森は、鋭い目つきで中原を見た。
中原は、恐らく自分が今から云う事がばれていると感じたが、それでも、
「Aを、外に出してやれないでしょうか?」
「何故だい?」
「彼奴は四年も外で日の光を浴びていません。次に外に出る時、支障をきたすと。其れに加え、体力も目に見えて落ちて来ています。此の儘では、孰れ歩く事さえ出来なくなります」
「中也君、私が今迄合理性に欠いた判断をした事があったかね?」
森が云い放った其の言葉に、厭な予感がしたが、其れでも敢えて口を開いた。
「然し、」
「然し何だと云う積りだい?次に外に出る時?そんな機会はない。体力が落ちて結構。此処から逃げられる危険性が小さくなるだけだよ」
「首領、貴方は、Aをーー」
自力で生きていけない様にするつもりなのか、と云う事は出来なかった。
「中也君、方法はどうであれ私は彼女を護りたいのだよ。今迄は彼女の意思を尊重していたが、其のまま行けば孰れ彼女は外に出て危険な目に遭うと判断した。だからこの様な措置を取った、其れだけだ」
はっきりと断言されてしまえば、中原に出来る事はない。挨拶をし部屋を出ようとした時、
「ああそうだ中也君、君に任務だ。明日から西方の争いの鎮圧に向かって欲しい」
衝撃的な発言に中原は一瞬固まった。
「中也君?」
「分かりました、失礼します、首領」
気を取り直して、一礼して部屋を出た。
Aの部屋に向かう足は自然と速くなり、頭の中で失言をしたと後悔した。
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作者名:京beスウィーツ | 作成日時:2017年9月24日 9時