58.彼なりの助言 ページ9
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俺の言葉にシュガくんはなにも言わなかった。
おっと、いけないいけない。変な空気を作ってしまうところだった。まあもう手遅れな感じもしなくはないけど。
斜め向かいに座ったままの彼に、へらりと笑ってみせるけど、微妙な表情は変わらない。
『と、まあなんとも反応しにくい話してごめんね?それで一応俺にも情っていうのがあるからさぁ、あいつのことどうにかしてやらないとなって思ってたわけよ。そんな時にちょうどよさそうなのがいたからさ』
「ちょうどよさそうなのって言われても、それを俺が知ったからって、状況が変わるとは思えないんですけど」
『それも一理あるよね。でも、話さなければ、行動を起こさなければ、ずっとそのままでしょ?あいつはなにも変わらない。でも、少しでもなにか状況が変われば、なにか変わるかもしれない。俺が望んだ方向に行くとは限らないけどね』
仮定に仮定を重ねる話は、あまり好きじゃない。どうやらそれは彼も同じみたいだ。
『でも、シュガくんは絶対、Aのことが気になって仕方がなくなるよ』
「なにを根拠に」
『俺の勘かな』
「あの、胡散臭いって言われたことありません?」
そんな質問にもへらりと笑って流す。それからわざとらしく腕時計を見た。
『そろそろ帰らないといけないんじゃなかったっけ?こんなとこで油売ってて大丈夫ー?』
「…帰ります」
『どーぞ?』
ガタガタと音を立てて椅子から立ち上がる彼を見ながら、フッと笑みがこぼれた。だらだらと少しだるそうに扉に向かって歩いていく。
そんなあまり大きくない背中を見ながら思う。
『(…この賭け、負けらんねーぞ)』
頭の中に流れるのは、シュガくんの言葉。俺自身があいつを変える、か。それが現実に出来たなら、どれだけ毎日を生き生きと生きることが出来ただろう。
『(頼むぞ、少年団たち、)』
強い想いを込めながらジッと視線を注いでいれば、ドアノブに手をかけた彼がふと立ち止まった。それから、ゆっくりと俺の方へと振り返る。
『…ん?どした?』
「いや…、」
俺を見ながら、彼は少し困ったように眉を下げた。…前髪で眉は見えないんだけどね。そんな気がしたってだけ。
「…あんまり、気負いしすぎないほうがいんじゃね?」
それだけ言って出て行った彼に、思わず吹き出してしまったことは内緒にしておこうか。
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さとう(プロフ) - 2年ぶりに覗いたらお話更新されてた…! (2020年5月31日 2時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 更新ありがとうございます!面白すぎます。なんで投票一回しかできないんでしょう、、、すでに投票済みになってる。 (2020年5月23日 20時) (レス) id: 42e9c67f6c (このIDを非表示/違反報告)
♪♪♪♪ - すっごいおもしろいです! 最高です! (2020年5月22日 9時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
ぐぅ - どんどん読み進めていくたびに引き込まれていきました、更新楽しみに待っています (2020年5月1日 11時) (レス) id: c991b8fbaa (このIDを非表示/違反報告)
2525(プロフ) - 1番好きなお話です!更新すっっごく嬉しいです(T_T) これからも楽しみにしています☆ (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58a0df5f9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:穂高 | 作成日時:2016年9月5日 22時