88.ミガキ ページ39
(Side,Reset)
きっかけは、なんだったんだろう。
トイレにふらりと向かった先にいたジョングクが、とても美しかったから。
のまれるなんて、簡単だった。
チャリンと音がしたのだ。落としたのは、私。落ちたのは、鍵。それにジョングクが反応して、動いたのが視界の端でわずかにうつって。それを見ながらも条件反射で私もしゃがんで。
拾おうとした矢先だった。
『っ、』
「うわ、」
ガンっとおでこに衝撃が走ったのは。
なにがどうなってそうなったのかはわからないけれど、体勢を崩したらしいジョングクのそのシャープな顎が私のおでこに激突したのだ。
痛みにクラッと崩れた体勢をなんとか踏みとどまったジョングクが私を支えて、はた、としっかり目があった。
熱を持ったジョングクの瞳。
そこから、距離がゼロセンチになるなんてのは、あっという間のことだった。
衝撃だった。
私をまるで、食べるみたいに。
熱く、強く、押しつけられるくちびるは、ひどく色気を帯びていた。
くちびるが離れるたびに合わさる視線。
私を射抜くような視線。
ずくり。身体の中のなにかが、私に強く訴えかける。
どれくらい、そうしていたのかはわからない。
言葉を交わすこともなく、降り注いだ口づけがやんだのは、シュガを呼ぶジンの声が聞こえたからか。
「っ、」
その声が聞こえたのは、ジョングクも同じらしかった。はっと我に帰った彼は、なにか言いたげに口を開いて、それでもその口から音が漏れることはなくて。
「ジョングガ、なにしてんの」
「あ…、ひょん」
ふらりと壁の向こうから現れたのは、名前を呼ばれていたシュガで。先刻までの私たちを彼は見ていたのだろうか。
「…あんたも。メイクはみんな次の店行くって」
『…どうも』
ぶっきらぼうにかけられた声に、短く返事をする。二次会？そんなもの、行くわけがない。早く、早く、ああ。ジンジンと体内で燃えた熱が、冷めない。
ジョングクは、もう私に視線をくれることなく、シュガのあとをついていく。
目を閉じれば浮かぶさっきの表情。
ああ、どうして気付かなかったのだろう。
私を見据えるあの瞳。
間違いなく、アイドルではなく、欲 情したあの顔つき。
ああ、もう。
＿＿＿＿＿＿＿＿あんな綺麗な黄金比。
磨きをかけるなんて簡単だったじゃないか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7376人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとう(プロフ) - 2年ぶりに覗いたらお話更新されてた…！ (2020年5月31日 2時) (
レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 更新ありがとうございます！面白すぎます。なんで投票一回しかできないんでしょう、、、すでに投票済みになってる。 (2020年5月23日 20時) (レス) id: 42e9c67f6c (このIDを非表示/違反報告)
♪♪♪♪ - すっごいおもしろいです！ 最高です！ (2020年5月22日 9時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
ぐぅ - どんどん読み進めていくたびに引き込まれていきました、更新楽しみに待っています (2020年5月1日 11時) (レス) id: c991b8fbaa (このIDを非表示/違反報告)
2525(プロフ) - １番好きなお話です！更新すっっごく嬉しいです(T_T) これからも楽しみにしています☆ (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58a0df5f9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：穂高
| 作成日時：2016年9月5日 22時
