86.誰も同じ ページ37
.
会も終盤にさしかかり、宴もたけなわと言ったところか、ちらりとマネヒョンが時計を気にし始めていた。時刻はまだそう遅くはない。
だが、未成年もいる飲み会なんてアイドルがするべきではない。
「よし、ならそろそろ締めだな!ソジュ頼むな!」
俺のそういう嗅覚は優れていると自負してる。マネヒョンが、ちらりとソジュヌナに視線をやるとすっとみんなの視線が集まる。
待っていましたと言わんばかりに、ソジュヌナはその場で立ち上がり、座って話を聞く体制に入った俺たちに目を向けた。
「バンタンのみんな、今日は忙しいところ、メイクチームの送別会に集まってくれてありがとう。短い期間だったけど、ユアにとってもここのチームでの経験はきっといいものとなったでしょう」
ソジュヌナは今日はお酒を飲んでいないらしく、その口振りは明快だ。送り出される本人も、未成年だからと、きちんとお酒は飲んでいないらしい。
「次の場所でも頑張ってね!」
にこっと笑って、話の締めにそういったソジュさんに、わあっと拍手が起こる。それに俺も乗っかって、パチパチと覇気のない拍手を送る。本当、短い期間だったなと。
じゃあ、お前ら帰るぞ!とマネヒョンが何故だか意気込んで、みんながそろそろと店を出て行く。全員で行くと目立つから、少人数で何度かに分けて。
そんな中、ソジュヌナがユアのそばに近づいた。
「____ユア」
「はい、オンニ」
「突然やめたいなんて言い出したときは驚いたわ。あんなに、うちでの仕事に熱を持ってたから」
「あ…、」
「…あなたにとって、ここは、きっと不思議な場所だったでしょうね」
「…、」
「圧倒的な才能、技術、センスを前にきっと、自信をなくしてしまったのかもしれない。そしてそれが、センスだけに任せたものじゃないと知った今、続けていく気持ちをなくしてしまったかもしれない」
「っ、」
「だけどね、それは私も同じなのよ」
「!!!」
誰のことを言っているのかなんて、聞かなくてもわかるものだった。これ以上の立ち聞きはきっとよくないだろう。俺は二人を一瞥して、前を歩くジニヒョンを追う。
「あ、ユンギ」
『なんすか』
「ごめん、ジョングガがトイレ行ったみたいだから、一応見に行ってやってくれる?酔っ払いに絡まれるとよくない」
『あー、了解です』
.
7376人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとう(プロフ) - 2年ぶりに覗いたらお話更新されてた…! (2020年5月31日 2時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 更新ありがとうございます!面白すぎます。なんで投票一回しかできないんでしょう、、、すでに投票済みになってる。 (2020年5月23日 20時) (レス) id: 42e9c67f6c (このIDを非表示/違反報告)
♪♪♪♪ - すっごいおもしろいです! 最高です! (2020年5月22日 9時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
ぐぅ - どんどん読み進めていくたびに引き込まれていきました、更新楽しみに待っています (2020年5月1日 11時) (レス) id: c991b8fbaa (このIDを非表示/違反報告)
2525(プロフ) - 1番好きなお話です!更新すっっごく嬉しいです(T_T) これからも楽しみにしています☆ (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58a0df5f9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:穂高 | 作成日時:2016年9月5日 22時