75.２つの顔 ページ26
.
なんとも言えない空気感に、ただ押し黙ることしかできない。というか、なんて声をかければいいんだ。こんな切ない表情をする人に。
「…と、いうよりは、まあ心当たりあるんだよね」
『…え？』
ヘラっとさっきまでの雰囲気を瞬時に消して、彼は笑う。心当たり。まるで、犯人を知っているかのよう。
「このトーナメントは、君たちの知らないところで違う意味を持った戦場になってる。それが、今回のメイクボックス紛失事件の原因なんじゃないかな」
『そ、それってどういう』
「さあ…、まだ俺にも確信があるわけじゃないからハッキリとしたことは言えないんだけどね。でも、可能性はなくはない」
『いったい誰がそんなこと、』
「ごめんね。それはまだ言えない。けど、責任はきちんとうちで取るよ」
『…！！』
「ジミンくん。また、話をしよう。きっとそう遠くないうちに」
『あ…、はい』
目で制されるとはまさに今の状態のことを言うんだろう。さすがは、この国の芸能界の頂点に立つグループの一員。まとうオーラが違う。
僕を1人廊下に残し、去っていくその後ろ姿にわずかに身体が震える。あの大きな背中に。
責任は取る。
確かに先輩はそう言った。
それは、EXO先輩サイドの人間に、犯人がいると言い換えられる。
…どうして、そんな必要が？
EXO先輩にとって、俺たちが邪魔だとか？
いや、違う。あの先輩たちを見くびっちゃいけない。そんなことをしなくても、真っ向から潰しに来れるだろうあの人たちなら。
じゃあ、一体なにが目的で？
「…ヒョン？」
ポンっと肩に置かれた誰かの手。ふと我に帰って、背後に振り返る。
『…あ、ジョングク』
少し心配そうな表情を浮かべたジョングク。耳についたピアスが少し光って見えた。
「ヒョン、なんかあった…？」
『え、なんで？』
「なんか、顔色悪いです。お化けでも見たみたい」
『お化け…、まあ、あながち間違ってないのかも』
「は？」
怪訝そうなジョングクをよそにグルグルと考えがまとまらない。ちらりと見せられた謎の片鱗に、意識が絡め取られて離れない。
チャニョル先輩の言う、心当たりって誰なんだ。
そしてこのビューティートーナメントの裏にある、僕たちの知らない戦いっていったい…？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとう(プロフ) - 2年ぶりに覗いたらお話更新されてた…！ (2020年5月31日 2時) (
レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 更新ありがとうございます！面白すぎます。なんで投票一回しかできないんでしょう、、、すでに投票済みになってる。 (2020年5月23日 20時) (レス) id: 42e9c67f6c (このIDを非表示/違反報告)
♪♪♪♪ - すっごいおもしろいです！ 最高です！ (2020年5月22日 9時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
ぐぅ - どんどん読み進めていくたびに引き込まれていきました、更新楽しみに待っています (2020年5月1日 11時) (レス) id: c991b8fbaa (このIDを非表示/違反報告)
2525(プロフ) - １番好きなお話です！更新すっっごく嬉しいです(T_T) これからも楽しみにしています☆ (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58a0df5f9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：穂高
| 作成日時：2016年9月5日 22時
