74.入れぬ者 ページ25
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これくらいのサイズ、なんて、ふわりと大きな手で空をかく。よくよく考えれば、黒のメイクボックスなんて、今までたくさん見てるからかぴんとくるものはない。残念だけど。
『…EXO先輩のメイクさんのものがなくなったんですか？』
「え？ああ、うん！そうな、…じゃなかった。今は俺たちのとこじゃないんだっけか」
一度は勢いよく返事をしたものの、すぐにシュンとした表情を見せる。いつもにこにこしている先輩からは、少し想像出来ないような顔付き。
…もしかして。
『あの、なくなったのって…、』
「うん、きっと今ジミンくんが考えてる通り、Aのメイクボックスだよ。しかも、２つ」
『…え？』
え、２つ？じゃあ、予備であるメイク道具も全部？予想を超える回答に驚きを隠せない。
「知ってるのかわからないけど、いつもAは予備のメイクボックスも持ち歩いてるんだよね。さっき、たまたまBTSのメイク室の前を通った時に、中でAとシュガくんが話してるの聞いちゃって」
『聞いたって…、じゃあどうやってメイクを？確かにさっきヒョンはメイクをしてるように見えたんですが…、』
「うん、口紅だけでメイクしたみたいだよ」
『マジか…、』
あの儚げな雰囲気を口紅だけで彼女は作り上げたというのか。メイクのことなんて僕にはさっぱりわからないけど、それでも彼女の技術がきっと凄いんだろうということだけはわかる。
だから、ジョングクだって、彼女が自身に触れることを許しているはずだ。
「凄いんだよ、あいつは。俺たちなんて叶わないくらい」
『…、』
「誰も、真似なんてできない」
あの低い声で、はっきりと。一言一言噛みしめるように言葉は形をなす。
『…でも、なんでAさんのメイク道具をチャニョルさんが？いくら元EXO先輩のメイク担当だったからとはいえそこまでしなくても…、』
歯切れの悪い僕の言葉。違う、こんなことが言いたいわけじゃない。だけど、どうしてだか切なそうな先輩の声、表情、溢れ出る雰囲気に疑問は募っていくばかり。
「確かにそうだね。彼女の興味対象から外れてしまった俺たちに、どうこうする資格なんてないのにね、」
『…え？』
「どれだけ必死で、どれだけの月日をかけても、彼女の興味を引くことは、彼女の興味対象内に入ることは…、」
そのつぶやきは、誰に向けられていたんだろう。
「…できないのにな、」
酷く悲しい音がした。
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さとう(プロフ) - 2年ぶりに覗いたらお話更新されてた…！ (2020年5月31日 2時) (
レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 更新ありがとうございます！面白すぎます。なんで投票一回しかできないんでしょう、、、すでに投票済みになってる。 (2020年5月23日 20時) (レス) id: 42e9c67f6c (このIDを非表示/違反報告)
♪♪♪♪ - すっごいおもしろいです！ 最高です！ (2020年5月22日 9時) (レス) id: 18287f45f1 (このIDを非表示/違反報告)
ぐぅ - どんどん読み進めていくたびに引き込まれていきました、更新楽しみに待っています (2020年5月1日 11時) (レス) id: c991b8fbaa (このIDを非表示/違反報告)
2525(プロフ) - １番好きなお話です！更新すっっごく嬉しいです(T_T) これからも楽しみにしています☆ (2020年4月26日 17時) (レス) id: 58a0df5f9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：穂高
| 作成日時：2016年9月5日 22時
