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何事もなく授業をして、何事もなく部室に向かう。
今日は音楽がないので、友人とはここでお別れだ。
「じゃ、また明日ね〜。」
「また明日!美術頑張れ!」
手を振って部室に向かう。
「失礼します。」
「あ、先輩!」
奏舞君、早いなぁ。
「絵、見せて?」
「はいっ。」
差し出されたキャンパスを手に取り、じっくり見る。
……やっぱり、とってもいい絵。
うまく言えないけど、想いがこもってるような気がする。
とっても暖かくて、優しくて、可愛らしい。
……想いに可愛らしいって、変かもね。
奏舞君は緊張したようにこちらを見つめている。
「いいと思う。奏舞君は、絵に想いを込めるのが上手。」
「……想い。」
慎重に、言葉を選びながら。
「だから、……感じたことや思ったことをそのまま描く。大丈夫。たとえ誰が何と言おうと、君の絵は素敵。私が保証する。」
奏舞君が何を感じてここに来たのか分からない。
でも、来てくれたからには先輩として、ちゃんとサポートしたい。
「ありがとう、ございます……。」
照れてるのか、奏舞君の顔が赤くなってる。
「……可愛い。」
「!?」
思わずその綺麗な白髪に手を乗せる。
奏舞君は慌てるけど抵抗はしなくて、されるがままになっていた。
「可愛いより、かっこいいがいいのに……。」
「ん?どうかした?」
聞き取れなくて奏舞君に顔を近づけると、奏舞君はさらに真っ赤になる。
「いっ、いえ!それより、皆さん遅くないですか?」
「確かに。」
もうすでに来ていてもおかしくないけど。
「いやぁ、熱々ですね、お二人さん。」
今朝の友人と同じようにニヤニヤして、こっちに来る部員たち。
でも、熱々とは……?
「な、誤解ですよっ。ほら、先輩も何か……!」
「何がどうなってるのか分からないけど、私と奏舞君は話してただけだよ?」
「え〜、いつもそんな距離なの〜?」
からかうような声に疑問を持ちながらも、首を縦に振る。
「そうだよ?」
「ぇ、先輩……?」
奏舞君の驚いた声が聞こえた気もしたけど、それは部員達の歓声でかき消された。
「もう、先輩、何を言ってるんですか……!」
まだ熱が冷めていない顔を向けて、奏舞君は言う。
言葉の割には、怒ってないみたいだけど。
「ごめんね?」
「まぁ、いいですけど……。」
困ったような、少し嬉しそうな奏舞君の声を聞いて頬を緩める。
「奏舞君、可愛い。」
「ありがとうございます……。」
また真っ赤になっちゃった。
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*柑橘類*@馬鹿同盟(プロフ) - 鈴白らむねのサブさん» あんがと((( (2021年9月6日 11時) (レス) id: dcab7e85b3 (このIDを非表示/違反報告)
鈴白らむねのサブ - すこ。 (2021年9月5日 12時) (レス) id: 9cd855a560 (このIDを非表示/違反報告)
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