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宿舎を飛び出したことについて話すメンバーは誰一人としていなかった。
だから余計恥ずかしくなった。
恥ずかしくなって、また消えたくなった。
「ジェヒョン、ちょっとおいで」
そうして最初に話しかけてきたのは、マネージャーだった。
デビュー当時から一緒にいるヒョンは、つい最近まで心の支えだった気がする。
けどいつの間にか、なんだかよく分からなくなってしまった。
今だって、ヒョンの後ろを付いていくだけなのに、吐きそうになる。
会議室に二人きりになった。
どれくらいたったんだろうか。
「病院に行ってみないか」
突然のその一言に顔を上げれば、ヒョンはオレをじっと見ていた。
体調なんてどこも悪くないのに、何故?
頭の中に疑問しか浮かばないオレに、当然話が通じているものだとヒョンは話し続けた。
いつの間にか視線はテーブルの下で彷徨う手の方に戻っていて、気づけば「はい」と答えていた。
何に対しての返事なのか分からなかったし、10分以上の会話の内容も何も記憶していなかった。
会話といっても、言葉が区切られる度にただ頷いていただけだった。
「よかった」と呟くヒョン、オレは呆然と腕時計を見続けた。
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作者名:椿 | 作成日時:2021年9月20日 21時