疑惑 ページ3
冬の訪れを感じさせる朝。廊下に出た私を冷たい空気が包む。粟立つ肌を摩りながら階段を降りてリビングへと向かった。こんな日は温かいスープに限る。
扉の隙間から漏れる温かい空気に、早くはやくと手が急いた。ドアノブを捻り入ってきた私を大勢の目が振り返る。
…何か、いつもより人が多くないか?
「おはよう、ございます…?」
集まっている彼らは、私の顔を見るなり額をくっつけてヒソヒソと話し出した。
「どうする?」「言ってもいいのかな」と聞こえてくる言葉の断片に首を捻る。困った事があれば、いつもなら社長社長と煩いほど寄ってくる彼らがこんなに渋るとは。
煮え切らない様子に一先ず朝食にしようと横を突っきる。冷蔵庫の中身を確認しているところで私の裾が引っ張られた。
「社長」
手の主は剣持さん。エメラルドの瞳はいつもと違い不安そうに揺れていて、何かあった事は確かだと彼らに向き直った。
首を動かして他の方々を見回す剣持さん。取り囲む面々はアイコンタクトで「行け」とサインしている。
「何かあったんですか?」
「それが──…」
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「Aさんの元彼!?」
「あくまで“かもしれない”って話です!!」
焦った顔で睨まれ慌てて口を塞いだ。
深夜に帰ってきた私は知らなかったが
夕方の仕事中、
Aさんと親しげな男が現れたらしい。
彼を見た途端様子がおかしくなり、取り逃し、食欲減退に注意散漫、おまけに彼女の魅力の威勢の良さまで無くなってしまったと。葛葉さん曰く男は「またね」と甘やかな声で言ったらしい。
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作者名:かんか | 作成日時:2023年12月11日 16時