人生とは甘美である。Jun.M (ページ43)

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「初めてなんだ。
俺は……
俺の過去を知れば君は逃げるかもしれない。
ふさわしくないのかもしれない。
けど初めて感じた。
…こんなに誰かが欲しいと思うことも、
俺のモノにしたいって衝動に駆られるのも、
こんな心のもがきは全部初めてだ…
相手を必要だとする気持ちを持ったことがなかったんだ。
俺は常に自分のことだけを考えてきた。
じゃないとここまでこの世界で生き残って、成功を収めることは難しかった。
なのに…こんなに本気で関わりたい、離したくないと思ったのは初めてなんだ…君に出会ってしまったから。
君を見た瞬間に、ようやく見つけたと思った。
……君に触れたいし、むちゃくちゃに抱きたくなる。」

「…わ……もで、す」

「え？」

「…私もです。」

ぎょっとした顔で松本さんが私を見た。

「でもこれが、この感情が何で出来ているのか分かりませんでした。今の今まで。
でも今ようやく分かりました。
私が今まで経験してこなかったその感情が、
……どうしようもなくあなたに惹かれてるんだって。」

蚊の鳴くような声で振り絞る。

松本さんがゴクリを音を立て唾を飲みこんだ。

「……あなたのモノになりたい」

ゆっくり告げると、松本さんは私の頬に手を置き、そっと撫でた。

彼の指がガタガタと震えている。

私も奥歯がガタガタと小さく震えていた。

「…っ、松本さんがどう思うのかは分かりませんが。私のこれはきっと…恋です、たぶん」

「…なら、俺のこれも恋だ」

おでこがコツンとぶつけ合い、お互い目を瞑りながらそこに存在する空気を味わった。

何一つ溢さないように。