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「はい、僕も大好きです。」
それは私にではなく、三島由紀夫に言ったのであって。
彼にこんな言葉を言われてしまったら私だけでなく世の女性はきっと腰から崩れ落ちてしまうだろう。
松本さんの射るようなまなざしに私はまるで裸にされているような感じがした。
息が上がりそうになり、ガタガタと軽く震えてきた指先をぎゅっと握り直した。
沈黙が怖い。
急いで「…っ、何の作品がお好きなんですか？」と質問した。
「……春の雪かな。」
意外だった。
「春の雪ですか…最後は悲しいお話ですよね。衝撃的ともいいますか…」
「そうなんだ。清顕が自分の思いをコントロールするために、聡子につらく当たってしまったり、最後の2人が愛するあまり互いを想って取った行動の結果がああいう最後だったのが切なくて美しいと思ってね。
…僕はあまりハッピーエンドが得意じゃないんですよ(笑)」
「…そ、そうなんですね」
「園田さんはどの作品がお好きですか？」
「私は…潮騒です。最後は春の雪と違う方向性なんですけど…」
「ほぅ…。潮騒。理由を聞いても？」
「っ、そんな大したものではないんです。
ただ私は初江ではなく、新治の方に感情移入してしまうというか。
恋を知らない新治が初めて初江を目にした時の鼓動の描写を読んだ時…ゾクゾクしました。
彼の感情を追っていくに連れてドキドキが止まらなくて、そしてそれが…羨ましくもあって。」
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作者名：Clara
| 作者ホームページ：https://www.instagram.com/st.clara.6/?hl=ja
作成日時：2021年2月6日 16時
