人生とは甘美である。Jun.M (ページ32)

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時折心から懇願するような顔をしながら必死に言葉を紡ぐ彼を見て嘘を言っているわけではないと思った。

だけど、こんなに恐ろしいほど綺麗な人に求めてもらえたという事実を理解できない。

息が上がりながら、私は必死で感情を殺す…。

私も、今までこんな風に心も身体もかき乱される人に出会ったことない。

見つめられるだけで足が震え、手が震え、奥歯がガチガチと小さな音を立てて震え出している。

触られた部分が熱く、それが時に自分をコントロールできないほどに悶々と身体が悲鳴をあげている。

本能的に悟った。

彼はアブナイ。

彼といたら私は私でなくなってしまう。

感情も欲も持たないように、全てのことから諦めをつけてきた私が。

近づいたらそれは最後。

なのに、彼と離れたくない。

本音はそう懇願している。

だけど、それに気づかないフリをした。

私はまたいつものように蓋をした。

「…一緒にいてほしいというのは、それは付き合うということですか？
きっと…意味が違いますよね？」

「君がそう願うならそういう形になればいいと思ってる……だけど俺はあまり恋人や夫婦という言葉の形に収めるのが苦手で。」

「私に…その、好意はないということですよね？」

「どの言葉が合っているのか正解は分からない。
けどその問いに対して答えられる言葉があるとしたら
完全にノー。

…悪いけど好意しか存在しない。」

言葉が出なくなった。
口が行き場をなくしてパクパクした。