人生とは甘美である。Jun.M (ページ31)

今日:14 hit、昨日:9 hit、合計:229,880 hit

31 ページ31

そう言うと私の右手をそっと自分の左胸へと導く。

彼に触れられた手にピリっと電流が走った。

その感覚は、まるで麻薬のように脳に直撃する。

彼の鼓動の音が私に届く。

とても早く、野太く助けを乞うように。

その瞬間、彼に触れてもらいたい、そんな思いが私の頭の中を駆け巡る。

その胸に抱かれたいと。…そう強く。

「君もでしょ？」

「……っ、そんなことありません。」

松本さんはそっと私の肩に触れ、そのまま指先の方へと私の腕をゆっくりとなぞり出した。

じっくり時間をかけて。

目は依然として私を見つめている。

手首にまで来ると、親指で脈が聞こえる部分をそっと撫でた。

ブルっと身体が大きく震えた。

「…ほら。」とフッと笑った。
「事情は後でちゃんと聞かせてもらう。
ここを辞めたくないだろ？…けど、
……それと引き換えに俺と過ごしてほしい。」

「…えっと、過ごすって、どういう」

「そのままの意味だけど？
なんなら期間を決めてもいい。
ただ仕事以外の時間を俺と過ごしてほしい。」

「…っ、そんなめちゃくちゃな！」

「わかってるよ、支離滅裂な展開に持ち込んでるのは。
けど…どうしようもなく君が欲しい。
見つめあうだけで、こんな風になるなんて…
それが何故なのか分からない。

……欲しいんだ。」