三十一 ページ31
「え？」
占い師にそう言われ、顔を上げる。
そこにはベネチアンマスクをつけた男性がいる。
さっき俺が見ていた一番人気の原田ひろ先生だ。
俺を見るなり驚いている。
何なん、めっちゃ怖いやん。
「あの、こんにちは。」
俺がそう言うと更にテンパる先生。
ホンマにこの先生が一番人気なん？
そう思っていると、先生はおもむろに仮面を外した。
「俺や。」
「え？�陲舛磴鵝�」
二人とも驚きで向かい合ったまま立ちつくす。
何で�陲舛磴鵑�ここに……。
「まぁ、せっかくやし座り。」
そう言われ腰を下ろすが落ち着かない。
姉に人気の占い師はサークルの先輩でしたーって言ったら何て言われるだろう。
「お姉ちゃんに連れて来られたんやろ？ さっき言ってたわ。」
そう言い笑う�陲舛磴鵝�
頷く事しかできない。
「悪いけど、俺の正体は言わんといて欲しい。」
「……なら何で仮面取ったん？」
ようやく絞り出した声は少しだけかすれていてちょっと恥ずかしい。
「望を信頼しとるからや。」
そう言い、手元にあったタロットをさばきだした。
そんな事を言われてしまったら黙っておくしかない。
しかしまさか占い師のバイトをしているなんて思いもしなかった。
「ほんで、悩みは？」
「いや、特には……。強いて言えば将来俺がどうなるか気になる。」
俺の言葉を聞き、真剣な表情になる。
本当は生年月日を聞くらしいが、既に知っているって事で省かれた。
まるでタロットが生きているんじゃないかと思うほど滑らかな動きだ。
スッと動きが止まり、一番上にあった一枚のカードをめくる。
「これが今の望。魔術師の正位置。ものごとの始まりを表してる。まぁそのまんまやな。」
まぁ上手い事良いタイミングで出たなぁ。
のん気に�陲舛磴鵑力辰鯤垢�。
「ほんでこれがこれから起こる事。皇帝の逆位置。……未熟、無力さを味わう。」
この先、俺も試練を受ける事になる。
とっさに思い浮かんだのはその事だ。
「でも力のカードが出てるから、勇気を出すことによって不可能を成し遂げる力を得る事ができる。」
悪い事を言われるんじゃないかと思っていた。
膝の上に置いた手を握りしめていた事に気づく。
�陲舛磴鵑牢靴譴深蠅弔�で目の前に置かれた四枚のうちの最後の一枚をめくった。
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作者名：かんた | 作成日時：2020年4月30日 23時
