早くこの夢から覚めて～ Issei.K～ (ページ5)

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「一世、西野A連れて来たぞ」

日当たりの良いテラスまで行って、井上くんがいきなり立ち止まる。

無理矢理連れて行くとか犯罪になるんじゃない？、なんて思いながら周りを見渡すと、簡単なつくりの木のベンチに腰かけている金指くんが目に入った。

「瑞稀くん、A先輩のこと、まさか無理矢理連れて来たんじゃ…」

金指くんの困ってるような声。

「いいのいいの。昼飯もぼっちなんかで食べてるやつなんだから、暇で仕方ないはずでしょ」

甘い声でズケズケとした物言いの持ち主は井上瑞稀。

私はイラッとしたけど、金指くんの前だから必死に抑えた。

「西野、ちゃんと弁当持って来たか？」

井上くんが私の方をしっかりと見ながら言う。

きれいで澄み渡った瞳。
学校中の女子がイケメンとほめたたえる彼だけど、私はやっぱり苦手だ。

「持って来てます…」

私は精一杯大きい声を出した。

「声ちっさ。俺、用あるから一世のこと、よろしく」

井上くんはそう言って、今いた中学と高校の共有テラスから高校の教室棟へと戻っていった。

「えっ、瑞稀くん…！」

金指くんの焦った声。

私は、金指くんと2人きりにされてしまいました。