素敵な夢と一夜のお話【wrw/rd!】 (ページ21)

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感情的兵器論. ページ21

息が上がってきた。人が走った後と言うのはこんなにキツいものなんだな。大先生が訓練をよく逃げていた理由が分かったよ。
目が霞む気がしたけれど、きっとそれは気のせいだ。さっきからしきりに私に通信を送ってくる奴がいるみたいだけれど、残念ながら聞きたくない。
C-Q190045、侵入者を排除せよ、と。残念ながら私の名前はAであって、そんな電子的なコードじゃない。ゾムはロボロを抱えて飛んでいった。それでいいんだ、私は。けれど、侵入者って1人きりじゃないんだろう？なあ、グルッペン。君は大将なのに何で来ているんだい？

「我が国の最新技術を舐めてもらっては困るな。早急に運び込めば命くらい簡単に救えるというものを。」

「生憎普通の命なんか持ってないものでね。体がバチバチするよ、静電気かな。放電かな？何にせよ今私に触れるのは危険だ。」

「ふむ。貴様はもうロボロと会わなくても良いのか？」

「そんな事は無いさ。勿論会いたいけれど。でも現実は非情なものさ？私は半分機械なんだから、もう会うすべはない。仕方ない事だよ。」

「ふむ。まあ元よりそんな言葉聞き入れる気も無いがね。」

そんな事を口走る彼が何だか危険に感じて瞬間的に距離を取った。筈なのにいつの間にか後ろに彼が居る。腹部への強い打撃と共に私は意識を維持出来ず、そのまま機能を停止した。

目が覚めた時が何時なのかは良くわからない。頭がぼんやりして、体がとても重かった。私の体はどうなったんだろうか。真っ白なベッドから体を起こすと、茶色いふさふさが目に入った。私はこれをよく知っている。
私のベッドを枕にして地面に座りながら寝る彼は、紛れもなく私が守ろうとした彼だった。

「ろぼろ…なのか？」

「当たり前だ、私が何のために体張って潜入したと思っているんだ。最もお前の超人的な能力は全て無くなったがね。」

パイプ椅子に腰掛けた金髪の彼がため息交じりにそう呟く。

「グルッペン。その、感謝してもしきれない。ありがとう。」

「ゾムにいう事だな。それじゃ、私は行かないとトン氏に怒られるのでね。」

そう言って部屋から静かに出ていく彼の背中を見守って、私はロボロの背中をそっと撫でてみた。
私が守って、守られた者。
彼はその双眼を見開いて私を映す。

「おかえり、A。」

「ああ、ただいまロボロ。」

捨て身で守ったこの人は、私の頭を撫でて笑った。