素敵な夢と一夜のお話【wrw/rd!】 (ページ16)

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彼らを見つけた。急いでここを出る様に伝えた。倉庫においてあるガソリンをばらまいた。階段下にポリタンクを放り投げ… られなくて、また彼処に戻った。ゾムは居た。そこに、居た。
肩も足も異形に崩して、もはや立てなくても。精神を失う事も、飛ばす事もせずに。ただその壁に背を預けて、ぼんやりと母体のいた場所を見ていた。

「…あー、最後の最後くらいかっこつけさせて欲しかったんやけどなあ。」

「そんなの認めない。私は認めないよ。」

「それでももうAの知ってるゾムは居ない。ここに居るのはそれになりきろうとした怪物だ。」

「それでも、ゾムの…君のその心は本物だろう？その思想も、その感情も」
「違う。これはコピーされた心。それはゾムの物であって俺のものじゃないんやで、A。早く行ってくれないと困る。」

「嫌だ、私は仲間を見捨てるほど馬鹿なやつじゃ」

「…A！俺はゾムを喰らった怪物、お前の友人の敵だ。命が惜しかったら早く行け、ライターくらいなら貸してやるから早く！俺はお前の友達じゃない、日常を壊す化物だ！」

彼は今まで見せたことの無い剣幕で怒る。本気で私を怒っている。私の身を案じて、自分を犠牲にして。

「その… その私を案じる心も偽物だってのか、君は！！」

「……ああそうだ！借り物の、偽物の心や！元より人と怪物なんて相容れないんやろ！？ならとっとと行け！早く！邪魔だ！」

「ふざけてんじゃねぇ！私はお前がそんな奴じゃないことを知っている！ゾムって人間はなぁ！もっともっとクズなんだよ！人を陥れては楽しみ苦しむ姿を見ては喜び面倒事に巻き込んで笑ってるようなやつだ！それでも仲間を何となく好いて何となく守って何となく楽しんでる奴だ！お前はそんなんじゃない！いいか、これはただの忠告だ！よく聞け化物！お前は今全然あんなのと似てねぇぞ！今のままじゃただの“良い奴”だ！偽物どころかただのそこらの人間だ！自分の善を貫き通す人間だ！もういい、お前なんて私の友人じゃない！こんな良い友人を私は持っていない！」

「…お前なあ！黙って聞いてれば人のこと散々言いやがって！もう怒った、俺は怪物になろうが生きてやるよ、お前の日常を面白可笑しく壊してやる！だからもう行かせねぇ、散々断りやがって！」

「馬鹿め、私が持っているこれを忘れたか！とっとと燃え尽きて地獄に落ちろクソ怪物！」

ああ、もう。これで良かったんだ。
こんな怪物に情なんてかけるものじゃないんだ。