素敵な夢と一夜のお話【wrw/rd!】 (ページ13)

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▽やっぱりページ13

「私を殺せば、スワンプマンはその生殖活動をやめます。しかし同時に、人に擬態するのもやめます。本来の姿のスワンプマンはこの星の気候に適応できず、いずれ死に絶えます。私は生に固執するつもりはありません。」

「決めるのは、貴女。」

「う…」

思考をしようとすればする程腐った様な、形容したくない香りが鼻をつく。私の銃口が次第に下がる。

「許容するのですか？偽物だらけの世界を。」

ゾムは何も言わずに怪物にナイフを向けている。きっと私がやって、と一言言えばやってくれるのだろう。彼は私の負担を減らす為に私の役を肩代わりしようとしてくれているのだ。

「ぞ、む。」

「やめ、て。」

「こんなの、もうやだ。殺したくない。わたしは嫌だ。」

「わたしは…！」

重い空気に押し潰される、全ての視線が集中する、足が次第にもつれてもその肉塊を踏み潰して階段をかけ登る。ゾムを置いて、私は逃げる。1つ、私の後ろを追って階段をかけ登る音がして、ゾムである事を願った。怪物が追ってきてるかもしれないのがとても怖くて、怖くて。止まれなくて、今にも崩れそうなくらいに砂を落とす天井におびえながら、とてつもない爆発音と共に、私は必死にその呪われた館から脱出した。

その後の事は考えたくもない。
ゾムは普段通り、特段変わった様子もなく生きている。あの後私の後を追って脱出し、その後仲間に事情を話して帰ったらしい。
私はカーテンも何も締め切ったこの部屋で一人ぼっちだ。二人になると、私が私でなくなってしまうから。私は奴を殺せなかった。ゾムもまた、殺さなかったと言っていた。瓦礫に潰れて死んでくれたかもしれない。ゾムが本当は嘘をついて殺してくれたかもしれない。あいつの話は嘘で、スワンプマンは生殖機能だけ失ったかもしれない。
ニュースには屋敷が謎の崩落、とだけ書かれていた。人の死体も何も見つかっておらず、ただ地盤がゆるかっただけだと事故扱いだ。それだけ見て、私はスマホを放り投げた。

「A、ご飯持ってきたで。」

ゾムが私の部屋の扉をノックする。彼の声で、私を呼ぶ。けれどそいつはもしかしたらスワンプマンかもしれない。喰われるかもしれない。自覚できないコピーかもしれない。私は思わず、“来ないで”と叫んだ。彼の声をしたそいつは、“悪い”とだけ謝ってどこかへ行ってしまった。