素敵な夢と一夜のお話【wrw/rd!】 (ページ12)

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怪物は全くもって綺麗な容姿をしていた。しかしこの中身はどうせあの怪物らと同じなんだ。私達を通す為に、コネシマも大先生もオスマンも戦ってるんだ。私達がここでトドメを刺せなくてどうするんだ。この怪物を殺せなくてどうするんだ。
私達は未来を託された。私達はこれを終わらせる義務がある。

この街の数十数百数千の人間と、まだ怪物となっていないこの世界の数十億の人間。
コネシマならこう言うだろう。
「そんなん数十億を助ける方がええやろ！？俺らのお陰で助かる数十億の人間がおるなら、そっちの方がええって！」

大先生ならこう言うだろう。
「好きにすればいいと思う。例え殺しても殺さなくても、俺は咎めない。そもそもここまで来れた事がおかしいから、別に逃げたっていいんだ。RPGじゃないし。」

オスマンならこう言うだろう。
「好きにするといいめう、でも殺したらきっと優しいAちゃんは酷く落ち込むと思う。でも、それは正しい事だから、君達に託してしまうことを許してね。」

なら、ゾムならどう言うだろう？

「…ゾム。」

「殺すべきや、と…思う。このままだと人間が絶滅して、この地球はスワンプマンの物になる。人間の形をしたスワンプマンに全てが置き換わる。やから、人を守る為にも…この怪物は、ここで殺すべきや。」

「…そう、だよね。私達がやらないと、もうチャンスは無いもんね。やら、ないと。」

私達はそれぞれの武器の先を怪物に向ける。
母体は少し悲しそうな表情を浮かべる。何故こんな怪物がそんな顔をするのか。

「ああ、貴方々はそれでも。私に、母に刃を向けるのですね。その天秤は、世界に傾くのですね。我が子は貴方々の平穏を、日常を奪わないというのに。」

「それでも人が死ぬ事には変わりない。俺らの世界に、お前らは必要無い。そもそも介入してくる事自体間違っているんや。」

「私達は私達の世界を守る。私達から見た怪物は、この日常を壊すのは貴方だ。貴方を殺して止めないと、きっと後悔する。だから、だから貴方を… 」

ここで、殺すと。そうは言えなかった。
私の中での抵抗心が怪物を目に捉える度に増していく。
この怪物を殺したとして、もし私の隣に居る彼が怪物に成り代わっていて消滅していたら。
もし一緒に戦ってくれた彼らが消滅してしまったら。
私と話してくれる友人が、親が消えてしまったら。

彼女を生かして、例え世界がスワンプマンに侵略されたとしても。
誰一人それに気付かず平和に暮らせるなら…