素敵な夢と一夜のお話【wrw/rd!】 (ページ2)

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事件なんて起こらなかった〈wrwrd〉ページ2

私はこの軍の医療班だ。医療班、と言ってもたった一人だから、班呼べるかすら不明だけれど。
そして、私は飛ばされた。つまりは左遷、という奴だろう。一人でこの異郷に着いた時、私の髪はばさりと落ちた。すんでのところでかわせたのか、それとも彼がそもそも当てる気がなかったのか。
突き出されたナイフに込められた殺意が酷く怖かったのを覚えている。
金髪の彼は何時も作戦を楽しそうに立てて、赤マフラーの彼が呆れ顔をして。
青髪の彼が金銭面で困っているのを赤い服を着た彼が横目に、橙の彼が慌てて懐から財布を出すのを黄色の彼が制止した。
緑パーカーの彼がくるくるとナイフを回して、マスクを着けた彼が危ないと声を掛ける。
彼らは特殊部隊。小説なんかでよくある、仲がいい方の特殊部隊だ。私はその中の医療班として彼等をサポートする。
そして、何故か。ここの医療班として派遣された人間は三ヶ月程度で逃げて、いやここから去ってしまう。まあ実態は恐らく彼らについていけなくなった医療班が必死に本部に配置変更を頼んだ事だろうが。

「そういや、A。新しい医療班が来るらしいぞ。」

とグルさんが言う。おかしいな、ここの医療班は一人の筈なのに。

「ああ、確か三ヶ月経ったから交代させる気でもう決めちゃったんだっけ？でもAちゃんは退く気は無いみたいだし、これからは医療班二人になるのかな？負担が軽減されるからいいかもね！」

そうロボロが補足をつけてくれる。ああ、そっかあ。
もう三ヶ月になるのか。時の流れは早いな、なんてまるで老人みたいなことを思ってしまった。

「へぇ、そうなんだ。本部もせっかちだよねー」

とくすりと笑えば、彼らも釣られてにこりと笑う。戦地でこのモチベーションを保つのも、私の仕事だ。メンタルケアから、怪我の治療まで。最も彼らにはメンタルケアなんていうものは必要なさそうだけれど。
さあ、一体どんな子が来るんだろう。男の子かな、女の子かな。
その期待に胸を踊らせて、私は夕飯のスープが入った鍋をくるりと掻き混ぜた。