【呪術廻戦】黙ってろモブ５-心身一如-【男主】

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匂いが、空気が、感覚が、無が、ここにある

２年ぶりに帰った家は変わりなく自室の物は全てそのまま





大丈夫、大丈夫

僕にはまだ感情がある

あの日までなかったものがちゃんとあるのだから





悟が当主と話している間、僕は自室いた

離れにあるほとんど誰も足を踏み入れない場所。

特に物はない自分の部屋は静かで、それでも誰かが定期的に片付けてくれた痕跡

庭も花が咲いている。雑草は生えていない








『ただいま…』







自然にそんな言葉が出た








「A様、お召し物のお着替えを」






長い廊下から静かに歩いて来ては足を折り頭を下げる母親の姿

普通だと思っていた、これが普通だと思っていて、当たり前だと思っていた





服に手をかけられ、スルリと脱げていく

悟がやるそれよりも丁寧で、服の上からわかる彼女の温度は悟より冷たい

たぶん、本当は、本当は









『お母さん』









２人だけの空間に響く声に顔をあげた彼女は目を見開き驚嘆を呑んだ

初めて僕は、この人のことを母親と呼んだ







『僕を産んだ時、うれしかったですか』




１年の授業参観の時、クラスメイトの多くは最後に”自分を産んでくれてありがとう”と言っていた

あれから２年経ったけれど、産んでくれてありがとうなんて言葉は嘘でも出てこない。だから

息が止まったように、静寂が部屋を包み「もちろんです」と震えた声が響いた

一度だけ、聞きたかった

一度でいいから、”僕”を見てほしかった







『僕が力を受け継がなかったら、僕は、普通に生きられましたか』





だからこれは僕の中での区切りだ

もしなんて仮定を、僕は今日捨てに来た







『あなたに愛される未来は、ありましたか』









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