【QK】十人十色【短編集】 (ページ2)

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いつか2 ページ2

sgi side

俺さ今でもAのこと思い出すんだよ。

Aが思ってる以上に俺、Aのこと好きだったのよ。

年下の君には大人っぽくてかっこいいところを見せたかったんだ。

初めて2人で出かけた日前日は緊張して眠れなかったんだ。かっこ悪いから言わなかったけど。

朝から沢山話をしてさ、夜には格好つけて星空見に行こうなんて誘っちゃってさ。

電灯やビルの灯りの届かない山の上で、2人で星を見たね。

あんまり綺麗なもんだから思わず口を開けて見とれちゃってさ、はっとして顔を引き締めてちらりと君を見たけどどうやら気づいてないみたい、よかった。

そしたら急に君が地べたに寝転んで星が綺麗に見えるんだなんて言うもんだから可愛くて可愛くて。

あぁ君らしいなって思ったんだ。

思ったよりも時間は早くすぎてさ、もう赤信号が点滅している時間。俺は初めて君の手をとって前を歩いたんだ。赤くなってるの、絶対気づかれてるよななんて思いながらもカッコつけて歩いたの、君はどう思った？もう答えはかえってこないけど。

寒いもんね、なんて言うもんだから照れ隠しなのかなって自意識過剰になっちゃったりしたんだよ。

それからたくさんの日々を過ごしたね。

頭2つ分違う君と相合傘をして周りから見られたり
よっぽど星が気に入ったのか晴れている日はよく公園でブランコに乗りながら星を眺めたね。

俺が君にカッコつけを辞めたのは確か大きな公園の湖の上だったね。

ボートに二人で寝転がって宙に浮いてるぜ？なんて言い合いながらはしゃいで。

2人でならさ、本当に飛べるような気がしていたんだ。

ずっとずっとふわふわと夢心地。君のとなり。

君が見る景色を全部俺のものにしたかった。

俺のものだと思っていた。

君がいなくなるまでは。

当たり前に2人で通ってたあの道、信号機無くなるんだってさ。

そんな風に君を思い出して切なくなる気持ちもいつかはなくなるんだろうね。

そういえば、寒い雪の降る日の誰もいない公園でいつものように笑いあっていたけれどいつもよりちょっと寂しそうな気がして初めて大丈夫？と声をかけたよね。

俺がその時気づいていれば何か変わった？
俺、そんなに頼りなかった？
何も相談できないような男だった？

今になって思い出したって後悔じゃ何も解決しないのにね。

忘れられないのは、受け入れられないのは、

Aを思い出にできるほど僕が強くないから。

暖かいココアを一口飲んで

またどっか遠くて

いつか。