16、青のビジュー ページ18
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「綺麗な本だなと思って」
本の表紙をなぞる
「…えっと、知り合いの子供というのは女の子ですか？」
「あぁ、童話みてェな絵本じゃなく深い恋愛小説がお望みらしい。アンタが好きなやつでいいから教えてくれないか？」
幼い女の子らしいが中々のチョイスだな…
恋愛小説は読まない事もない。選んだ本が偶々恋愛小説だったり、有名なものは気になって読んだり。読んでいると太宰さんにイジられて喧しくて仕方がないけど
「そうですね、私の好きな本ですか…」
その時、自分の中にあるこの本が目についた
「では、この本なんて如何ですか？丁度貴方も知っていらっしゃる様ですし」
「いいのか？」
「はい。私はまた次に借りればいいですし、…本当に読みたい方に読んでもらった方が本も嬉しいでしょう」
私はいつだってここに来れるし、別にこの本が目当てという訳でもない。それに、読みたい人がいるならその人に読んでもらいたい。
私に読まれるより、その子に読まれる方が本にとっても幸せだろう。きっと。
「…いや、この本はアンタが借りるといい。
俺は他のを借りるよ。読んだことねェんだろ？それ俺の好きな本だからよ、読んでみてほしいんだ」
「───お前に」
「……私に？」
「おう」
「そんな…私は大丈夫ですから」
「じゃあ一つ提案があるんだが、
来週のこの時間、またここで会えないか？」
青い瞳に紅色の髪が映って紫に光る。
この世のものとは思えぬ程に美しく感じられた。まるで魔法みたいに。
「次こそ教えてくれよ、アンタが本当に好きな本」
(……あ、笑った)
私の思考を惑わずその笑みは、天使のようでも悪魔のようでもあった。
矢張り彼の瞳には魔法がかかっているのだ。そうでなければ私を射抜いて離さない理由が判らない
「もうこんな時間か。先に失礼するぜ」
このままでは行ってしまう、
理由が知りたい。なぜ貴方なのか、なぜ出会えたのか、
なぜ、このままでいたいと思ってしまうのか
「…あの！私菊池っていいます、貴方のお名前は？」
「俺か？仕事の関係上本当は名乗れねェんだが……そうだな…」
「……中原だ。今日のことは誰にも云うなよ？バレたら俺が怒られちまう」
「またな」
✲
彼の背中を見送る。
ふと、持っていた本に視線を落とす
紅色の表紙に美しい青のビジューが付いていた。
「──Romeo and Juliet ……」
表紙には英語でそう書かれていた。
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しじま(プロフ) - しじみさん» はわ…コメントありがとうございます…！！最初しじみ様のお名前拝見した時私の名前と似ていて一瞬困惑しました笑 面白いだなんて…お褒め頂き光栄です、めちゃ励みになります！更新お待たせしてしまう事もあるかと思いますが今後ともよろしくお願いします♡！ (2023年4月6日 12時) (
レス) id: 56a96b1c08 (このIDを非表示/違反報告)
しじみ - めっちゃ面白いです！！！ (2023年4月6日 11時) (レス) id: cb27ff8610 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しじま | 作成日時：2023年2月25日 12時
