34:授業中 ページ38
「…で…ここは__で」
先生の声と、シャーペンが走る音が教室に響く。3年生になってから、自分の進路を意識して大人しくなった人が増えた。まぁ、誰でもこんなものだろう
先生は問題を書き終え、私たちを一通り見てから_
「_よし、じゃあ…田中、ここ解いてみろ」
「えっ…と」
田中君は、困ったように眉をひそめる。…答えがわからないのだろうか?
__つい、
「田中君」
「_え」
「X=8だよ」
私が声を潜めてそう言うと、田中君は少し動揺しながらも私の言葉を繰り返した。彼の答えに、先生は大変満足そうに頷く。
「正解だ。田中、数学嫌いとか言ってる割にできるじゃないか!」
「あ…いえ」
_よかったね。
私は再び、ノートを書くことに集中した。
すると__
「…いい子ちゃんぶりやがって」
_走らせていたシャーペンを止めた。
「椎名さんさ、緑間君に勝ってから調子乗ってない?」
「そういうのウザいよね」
私の周りの席の人たちのこそこそとした声が、異様に耳に張り付いた。
…なんなの?
「じゃあ…次、椎名。この問題を前に出て説いてみろ」
「…」
「…椎名?」
先生に呼ばれていたことに気がつかなかった。「はい」と返事して、答えを書きに行く。
書き終わった後、先生はにっこり笑って__
「椎名、よく予習してたな!」
「あ…いえ」
「最近、椎名は勉強頑張っているみたいだし…先生もうれしいぞ!」
褒められて嬉しいばずなのに__
あの席に戻るのがすごく怖かった。
席に着いた瞬間_
「スゲーなぁ。頭いい人ってうらやましわ。」
「いや、テストだって、カンニングしたんじゃねーの?w」
「ありえるー」
_私の席は後ろの方なので、当然彼らの声は先生に聞こえていない。
なんで…?
なんで、そんな風に言われなくちゃなんないの?
__ガダァン!!
派手な音が、教室に響き渡った。見てみると_
「…」
祥吾が、自分の机を蹴り上げていた。そして、無言でドアのほうに近づいていく。
「灰崎、どこに行く!?」
「…保健室。あ、ついでに頭いてーから早退しまーす」
「おい…待て!」
先生に問いかけにへらへらと笑いながら教室を出ていく祥吾。先生は「あいつ…」と若干イライラしながら彼を追いかけた。
__いきなり緊張感がほどけ、私は机に額をくっつけた。
…祥吾、
ありがとう。
*
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ミユウ - むっくんの作品もよかったけど、こっちも好き!なんか主人公が最後には報われるようなやつ。本当書くの上手だね! (2015年5月3日 21時) (レス) id: f62038dd2e (このIDを非表示/違反報告)
(* ̄ー ̄) - 毎回楽しみにしてます!! (2015年5月2日 22時) (レス) id: 639f544728 (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - 月葉さん» 楽しみだなんて…とっても嬉しいです!更新頑張ります (2015年3月16日 19時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - だるさん» ありがとうございます^^頑張ります (2015年3月16日 19時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
水島リツ(プロフ) - kibukibuさん» でしょう?最近この言葉聞いて思いついたんです! (2015年3月16日 19時) (レス) id: 1b884eaa7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水島リツ | 作成日時:2014年12月1日 23時