ヒロインなんて、なりたくない。６

134話 ページ8

「う、うぅ…」




　不安なまま家を出たからか、お腹がぎゅうーっと締めつけられるような感覚で押し寄せてくる緊張。

　時間前には着いたが、思ったよりも所要時間が少なくて済んだようでまだ15分前。とんだ誤算だった。

　せめてメイクだけでも落としてくれば良かったなあ…


　でも後悔しても遅いので、時計塔を眺めながら皆を待った。




「あーやー！！」




　スマホの時計をチラッと確認したとき、大きな声が近づいてきた。

　な、菜穂だ… 声が大きすぎて目立ってるよ…

　………って、




「か、か、かわ、可愛いいいぃ〜！！！」





　私も大きな声を出して、2人とも通行人に変な目で見られる羽目になった。

　でも、でも！

　そんなことより…


　菜穂が可愛すぎる！美しすぎる！


　珍しく私とは正反対のふわふわした雰囲気の浴衣を見に纏い、メイクもいつもの大人っぽいものとは違ったピンクが主流のコスメを多く使っているみたい。

　艶々な桃色に染まった形のいい唇が上向きになって、笑顔が見える。


　

「わ、若武くん来るからちょっと気合いいれてみた…」

「可愛い！似合ってる！」

「あり、がと…」




　恥ずかしそうにもじもじしている菜穂が天使すぎて、倒れるかと思った。(？)

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